料亭「菊乃井」の村田吉弘 灰皿投げられた理由 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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料亭「菊乃井」の村田吉弘 灰皿投げられた理由

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週刊朝日#結婚
村田吉弘さん、京子さん夫妻(撮影/熊谷武二)

村田吉弘さん、京子さん夫妻(撮影/熊谷武二)

 京都を代表する料亭「菊乃井」の3代目である村田吉弘さん。妻の京子さんとともに、若かりし頃のエピソードを明かした。

 京子さんは結婚後、しばらくは子育てと家事に専念し、女将としてデビューしたのは、2人の娘が小学校を終えてからだった。

吉弘「そこの水になじんでこそ泳ぐことができる、というのがおふくろの言い分で、いきなり座敷に出しても無理というもの。うちの方針は、店の子も最初の1、2年は遊ばせておけばいいという具合です」

京子「私は実家が呉服屋でしたから、お商売は好きでしたけど、やっぱり料理屋は違う。そう思っているときに、義母が『習うより慣れろ、や』と言いまして、その一言に張りつめていた心が、ほっとしました」

吉弘「でも、芯は強いと思いますよ。従業員にとっては怖い、厳しい、きつい女将です。ちょっと盛り付けが曲がっているだけで、『お客様にこんなもん出せへん』言うて、厨房に料理突き返しますからね」

京子「いやいや、それはなんでかと言いますと、日ごろ主人の盛り付けている料理を見ているからなんです。たったの5ミリ違うてもバランスが崩れます。これは菊乃井の料理やない、お客様に失礼と言うんです」

実は京子さん、若いころは尼僧になりたいと思ったこともあるという。

京子「つねに修行の身となってお人の役に立ち、精神を鍛えていくことに憧れていたんです。でも、それは料亭とて同じこと。いまでは、人生どこにいても修行やと思います。お客様を通して、たくさんの出会いがあり、また喜んでいただけば、ああ、お役に立っていると思う。仲居さんや板前さんがお客様からクレームやお叱りをいただけば、私のここがいたらないからだと、気づかせてもらえます。へこんでしもうてはあかん。根が小心者で臆病ですから、日々教えていただくという姿勢でないと前に進めないんです」

吉弘さんは若い日、フランス料理を目指したこともある。京子さんが明かす。

京子「主人は大学在学中から、先代の反対を押してフランス料理を学びたいとフランスに行っています。ところが、向こうで教えられたのは日本料理の素晴らしさ。そこで帰国して、やっぱり日本料理をやると先代に伝えたんですね。そしたら、『男が前言を翻すとはどういうことや』と怒った先代が灰皿を投げた。それが主人の眉のところに当たったそうで、傷が今も残ってます。当時の心境を思うと、胸が詰まります」

週刊朝日  2014年4月11日号


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