作家の室井佑月氏は、原発再稼働問題、特定秘密保護法に関して、持論を展開する。

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 あれから3年経った。復興は遅々として進んでいないように思われる。なのに、被災地以外に住んでいる人々の記憶からは、徐々にあの日の出来事が忘れ去られていく。とても切ない。

 そんなことあってはならない、そういう強い意気込みを感じたのは11日付の東京新聞だった。たっぷり被災地の話と原発の話。権力に対する皮肉もバッチリ。

 政財界は原発再稼働をさせる気まんまんみたいで、「重要なベースロード電源」なる新語まで登場したけれど、ちょっと待ったー! 国民のみなさまはほんとうにそれでいいのか?

 11日付の同紙に「フクシマ忘れ 政財界『再稼働』大合唱中 でももう一度確認 原発の電気は安くない」という記事が書かれていた。

 推進派が掲げる再稼働の理由は、相も変わらず「経済性」。しかし、それが真実か? 損害賠償、除染、廃炉の処理……。検証委員会が試算した事故処理費用は5.8兆円だったが、今年2月現在で14兆円に膨れ上がりまだまだ増えそうだという。金がかかるんだ、原発は。記事の中で立命館大学の大島堅一教授がいっていた。

「(原発の)現状を踏まえて再試算するべきなのに、政府は二年も前の数字で議論している」

 なぜか? 電力会社、融資している銀行、またそれらと癒着している政治家、権力の構造を変えたくないんだね、きっと。ただ、それだけ。

 一般国民には関係ないわな。一部の人々の権利を守るため、我々は、怖い思いをしながら高い電気を使いつづけなきゃならないの?

 そうそう話は変わるが、急ピッチで進められた「特定秘密保護法」だってどうなの?

 面白いからぜひ観てみなよと友達に勧められた動画、8日に放送された「北海道朝まで生討論」(北海道テレビ)。この日のテーマは「情報と秘密~特定秘密保護法と知る権利~」であった。そこで、ホリエモンこと堀江貴文さんが、テロ対策が専門のオジサンに質問をした。

「(この法律があったとして)スノーデンとかジュリアン・アサンジュをどう防ごうと思っているんですか」

 オジサンは「国家を守るため最大限の努力をするべき」というようなことをいっていたが、最後にはホリエモンに向かって、「あなたは人間の悪い面ばかりを見る」だって。

 それって答えになってないんじゃ……。だいたい、人間の悪い面を考えなくていいなら、テロ対策なんていらない。しかし、テロは実際にある。

 全国に48基ある原発になにかされたら、防ぎようがないのでは? 国民の知る権利が侵されるような特定秘密保護法を進めるより、なにかされないためのさらなる外交努力が必要なのでは?

 新たな法律が出来、新たな利権が生まれる。一般国民には関係ない利権だが、我々の税金が使われる。

週刊朝日  2014年4月4日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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