来年1月に相続税が「増税」がされる。その一方で、贈与税にはさまざまな特例や税の軽減措置がある。なかでも、「相続時精算課税」はとくに多額の資金を孫に贈る際に活用できそうだ。

 というのも、「無税」の枠が2500万円までと非常に大きいからだ。この金額まで、相続が発生する(財産を贈与した側が亡くなる)前に贈与できるのは役に立つだろう。

 こんな仕組みになっている。まず財産を贈与した際に、その分の税金をいったん払う。その後、贈与した人が亡くなったとき、相続税の税額を「相続財産の価額+贈与した財産の贈与時の価額」として計算する。その金額から、すでに払った贈与税の額を差し引く。

 不動産経済研究所によれば、14年1月時点で首都圏の新築マンションの平均価格は4637万円となっている。「無税」の枠をフルに生かせば、この半分以上を賄えるわけだ。

 そのうえ、この制定は15年1月に拡充される。孫への贈与がいっそうしやすくなるのだ。

 いまは贈る人が「65歳以上」で、贈与を受ける人は65歳以上の「推定相続人」だ。これが、贈与する側の年齢が「60歳以上」に下がるとともに、受ける側も20歳以上の「推定相続人および孫」と範囲が広がる。

 推定相続人とは、贈与する人の直系卑属(子どもや孫)のうち、優先順位が最も高い相続権を持つ人のことだ。贈与側(被相続人)の子どもが生きていれば子どもになり、子どもがいないときは孫に移る。だが、被相続人に子どもがいても、税制上有利な条件で孫に直接資産を贈ることができるようになる。

 この制度の大事な点は、相続が発生したときではなく、「贈与した時点」で財産の評価額が決まることだ。将来の値上がりが確実だと思えるマンションなどを贈与すれば、実際に値上がりしたとしても価格が安いときの評価額で相続税を計算できるので、現金を贈与するよりも節税効果は高い。

週刊朝日  2014年3月14日号