(c)朝日新聞社 @@写禁
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 被災者にとってその影響はまだまだ大きく残る東日本大震災。なかには自ら命を絶ってしまう人もいるが、<東日本大震災に関連する自殺者>の数と一致していないという。その原因をフリーライターの山川徹氏が調べた。

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 内閣府によると、警察が遺族への聞き取り調査や捜査などをした結果、<東日本大震災に関連する自殺者>と判断したのは全国で121人(14年1月現在)。いずれも(1)遺体の発見地が避難所、仮設住宅または遺体安置所である(2)自殺者の住居、職場等が地震または津波により甚大な被害を受けた、などの条件に当てはまったケースだ。

 一方、震災後に、ストレスや持病の悪化などで亡くなった場合は<震災関連死>に数えられる。岩手・宮城・福島の被災3県が公表する最新データを足すと2977人。こちらは遺族からの申請を受けて、市町村の審査会が震災や原発事故などとの因果関係を審査し、認定した数だ。認められると、遺族に最高500万円の災害弔慰金が支払われる。

 そこには当然、自殺者も含まれるが、管轄する復興庁はその数を明らかにしていない。さらに、必ずしも前出の<東日本大震災に関連する自殺者>の数と一致しないという。

 一体、どういうことなのか。例えば12年夏、宮城県沿岸部の仮設住宅で60代男性が自殺した。<東日本大震災に関連する自殺者>の(1)に該当するケースだ。だが、葬儀に参列した民生委員が言う。

「彼は(震災関連死に)カウントされていません。高齢の母親らが『震災から時間が経ちすぎているから』と申請しなかったんです。ここらへんでは『苦労しているのは自分だけじゃない』と遠慮して申請しない遺族は多い」

 つまり被災者の死で震災と関連づけられるはずのものが、統計に表れず、埋もれているケースが少なくないというのだ。

 こうした現状に危機感を抱いて活動するのは岩手県陸前高田市にある「いわて三陸ひまわり基金法律事務所」の在間文康弁護士(35)だ。こう警告する。

「<震災関連死>は亡くなった方たちの最期の声ととらえるべきだ。災害の後に何が起きるのかを私たちに教えてくれるもので、なおざりにしては未来に残すべき声が闇に葬られてしまう」

週刊朝日  2014年3月14日号