「1月10日からの3日間で、200件も『ペットのミドリガメを引き取ってほしい』という電話がありました。あの報道のせいですよ」

 そう憤るのは、多摩川を中心に外来種の魚類などの保護・譲渡を請け負うNPO法人「おさかなポストの会」創設者の山崎充哲さん。

 1月9日付の読売新聞夕刊に、「環境省は今後、法律(外来生物法)でミドリガメの輸入・飼育を禁じることにした」という内容の記事が載ったのだ。だが環境省に問い合わせると、「まだ情報収集をしたり、大量に捨てられないような規制の方法を検討している段階で、禁止とは決まっていない」という。先走り記事のようだが、ミドリガメが問題を背負っているのは事実だ。

 ペットショップや露店などでも見かけるミドリガメは北米原産で、正式名称をミシシッピアカミミガメ(以下アカミミガメ)という。

 生態系等への被害を防止する外来生物法が施行された2005年当時から、遺棄が多く、環境省では要注意外来生物として注意喚起をしてきた。

「アカミミガメは雑食で繁殖力も強い。野に放つと、イシガメのような日本固有のカメを駆逐してしまう恐れがあります」(環境省)

 日本では推定で数十万匹が飼われている。成長すると体長は30センチ以上にもなる。寿命は40年とも50年ともいわれる。いままでに約3千匹のアカミミガメを保護したという前出の山崎さんは、「気軽に飼って、引っ越しの際などに捨てるし、川に逃がすのがよいことと思っている人も多い。環境教育を見直したい……」と話す。

 神戸市立須磨海浜水族園では、10年から淡水に棲(す)むカメの調査に取り組む。

「国内の21地域で1年半調査をした結果、捕獲した2402匹のうち52%がアカミミガメで、31%がクサガメ、イシガメはわずか16%でした」(亀崎直樹園長)

 同園は「亀楽園(きらくえん)」というアカミミガメの保護研究施設を設置。カメの繁殖期(5~7月)にアカミミガメを川や池で捕って持参した人を入場無料にするサービスも実施している。

「去年は923匹が持ち込まれました。カメが悪いわけじゃないし、まだ長生きできる。輸入規制は必要ですが、ウチのような施設を全国に増やしたり、各地の老人ホームで飼ってもらったり。明るい方向で解決にもっていきたいですね」(亀崎園長)

 問題は根深いが、大切なのはいま飼っているカメを大事に考えることだろう。

週刊朝日  2014年1月31日号