身勝手な言い分に、傍聴席からタメ息が漏れた。

 生後間もない乳児2人を相次いで捨てたとして、保護責任者遺棄の罪に問われた東京都大田区の無職、戸沼英明被告(33)とホステスで妻の千恵美被告(31)の初公判が1月15日、東京地裁で開かれた。

 起訴内容は2010年1月30日、大田区内の民家の玄関先に、生まれたばかりの長女を置いて立ち去ったほか、11年3月6日にも次女を同区内の公園に捨てたというもの。両被告は起訴内容を「間違いありません」と認めた。長女は民家の住人が見つけ、児童相談所が保護。次女も通行人が発見し、保護された。

 ほかにも02年に生まれた長男、04年に生まれた次男がいるが、長男は出産後すぐに死亡しており、次男は虐待の疑いで児童相談所が保護していた。公判では、長男が死亡した経緯なども含めて、長女らを遺棄した動機に情状酌量の余地があるかなどが争点となった。

 英明被告が法廷で繰り返した動機は「寝ていたら長男が突然死んでしまった。自分の責任にされるのではと思い、発覚するのが怖かった」というもの。

 長男が死んだことでパニックになり、当時住んでいた埼玉県上尾市のやぶの中に、ポリ袋に入れて捨てたという。だが、検察側は「英明被告が長男を泣きやませるためにうつぶせにした」ことが原因と主張。千恵美被告も法廷で同じ答弁をした(英明被告は否認)。

 この長男の死を発端に、悲劇の連鎖が始まる。04年8月にもうけた次男は、生後3カ月後に容体が急変。病院に駆け込んだが、長男の存在が発覚することを恐れ、次男を病院に置き去りにしたという。この時、次男は頭蓋骨(ずがいこつ)内に出血があり虐待が疑われたが、両被告ともに虐待は否認している。

 長女の誕生は、その6年後。「出生届が出せないなら小学校に入れることもできないし、育てるのは無理だと思った」(英明被告)

 こんな身勝手な動機で千恵美被告と自転車に乗り、真冬の寒空のなか、長女を民家に捨て去った。

 自分たちの子どもに無責任すぎる行為を繰り返しながら、英明被告は「また(千恵美被告と)やり直していきたい」と述べた。千恵美被告も「(英明被告と)このあとも一緒に生活していくつもり」と語った。

 検察側は両被告に懲役4年を求刑したが、二人が「共依存」から脱却しない限り、悲劇が繰り返される可能性もある。判決は2月10日に言い渡される。

週刊朝日 2014年1月31日号