アトピー性皮膚炎は治りにくい病気とされてきた。ところがステロイド外用薬を使った治療で寛解を維持できるという。アトピー性皮膚炎治療の現状を、日本皮膚科学会理事で、東京女子医科大学病院皮膚科主任教授の川島眞医師に聞いた。

*  *  *

 アトピー性皮膚炎は、遺伝的要因と環境要因が複雑にからみあって発症する慢性疾患です。治療目的は、皮膚の良い状態が続き、悪化が起こらない寛解状態を保つこと、あるいは悪化しても長引かせないことに置かれます。

 治療の中心であるステロイド外用薬は副作用の恐れがあるため、使用に抵抗を感じる患者さんが増えました。しかし適切に使用すれば、これに勝る薬は現時点ではないといっていいでしょう。

 いま注目されているのが、ステロイド外用薬を使った「プロアクティブ療法」です。臨床の現場ではこの方法は以前から用いられていました。最近、病状が悪化したときにだけステロイド外用薬を使う、従来の「リアクティブ療法」と比較したデータがいくつか発表され、その効果が明らかになりました。

 そのほか、免疫を抑制して過剰な反応を抑えるタクロリムスという外用薬もあります。ステロイド外用薬の副作用のあらわれやすい顔面に使われたり、副作用のリスクを低くしたりする目的で使われます。

 現在、複数の治療法が治験中であり、今後、新たな外用薬が登場する可能性もゼロではありません。また、炎症を引き起こす物質の解明も進んでおり、いずれはその物資に対する抗体薬が登場するかもしれません。

 しかしいま大切なことは、ステロイド外用薬をいたずらに恐れず、医師の指導に従って適切に治療に用いることです。アトピー性皮膚炎は寛解維持可能な、コントロールできる病気なのです。

 それには、ステロイド外用薬の使用を患者任せにしない医師を選ぶことが必要です。アトピー性皮膚炎の治療に積極的に取り組む医師なら、患者さんが適切な場所に塗っているかどうかも評価してくれるでしょう。

 1年以上治療しているのに改善されない場合は、アトピー外来やアレルギー外来のある総合病院への受診をおすすめします。

週刊朝日 2014年1月24日号