1月23日に告示される東京都知事選が迫る中、候補者選びが最終段階に入っている。「後出しジャンケン」が有利と言われる中、舛添要一氏、東国原英夫氏らの本命候補に加え、かつて猪瀬直樹氏を擁立した石原陣営などから“ウルトラC”として名前が挙がるのは、日本サッカー協会(JFA)最高顧問の川淵三郎氏(77)だ。ジャーナリストの若林亜紀氏と本誌記者・小泉耕平氏がリポートする。
「77歳で都知事選に名前が挙がるほうがおかしいでしょ。俺の名前が出ること自体、勘弁してくれってことだよ。俺は、舛添さんが良いと思うよ」
本誌の直撃を受け、こうエキサイトする川淵氏。猪瀬氏が都知事に立候補した2012年末、選対本部長も務めた。わずか1年後の辞任会見で猪瀬氏は川淵氏に“引導”を渡された経緯を明らかにしている。
「『猪瀬さん、(都知事職は)ここでいったん打ち切ろう。東京五輪は自分が一生懸命支えていきますよ』と温かい声をいただいた」
五輪を支えるということは、都知事選出馬もあり得るか……と思いきや、川淵氏はこのやり取りを本誌に真っ向から否定した。
「そんなの一切言ってないよ。猪瀬さんが、『しっかり五輪の準備をやりたいのでやっぱりやめなきゃいかん、迷惑かけて申し訳なかった』ということを、向こうから言ってきたんだ。俺がやめろとか、言うわけないじゃん」
大阪出身の川淵氏は早稲田大学時代から日本代表に選ばれ、1964年には東京オリンピックに出場。現役引退後は古河電工では子会社の取締役部長まで出世するかたわら、ロス五輪強化部長や日本代表監督を務めるなど後進を育てた。91年にJリーグ初代チェアマン、02年にJFA会長となり、現在は最高顧問である。
川淵氏はJFA名誉総裁の高円宮妃久子さまとプライベートでも親しく、妃のオリンピック招致スピーチ実現の立役者でもあった。華々しい経歴を誇る一方、JFAの運営をめぐっては強権的な手法が批判されたこともある。
「『川淵キャプテン』という呼称をマスコミに売り込むなど自己顕示欲が強い」(スポーツ紙記者)
猪瀬氏の都知事就任後の13年4月には首都大学東京の理事長に抜擢された。
この間の経緯を、首都大学東京での教職員へのスピーチで、本人が上機嫌で明かしたという。
「猪瀬知事から直接、理事長就任を打診する電話をもらいました。びっくりしたし、何度か断ったのですが、根負けしました」
だが、同大学の教職員らはこう困惑する。
「大学と何の縁もゆかりもない氏が理事長に就任したのは、我々もびっくりだった」
「どう見ても選挙の論功行賞ではないか……」
川淵氏が就任したのは首都大学東京を運営する「公立大学法人首都大学東京」の理事長。同法人は新宿の都庁内にあり、首都大学東京及び都立産業技術高専と同大学院大学の経営企画をする。職員30名で、副理事長はじめ、都庁職員も多く出向している。理事長の仕事ぶりはどうか。
「川淵理事長は、だいたい週に2回出勤し、職員から大学の運営状況の報告を受けたりしています。八王子にも理事長室があり、週に1回行き、公用車もつきます。年収は2千万円ぐらいです」(同大学)
当の川淵氏は、「論功行賞」説にこう反論した。
「猪瀬さんから電話で頼まれたときは、『マスコミに論功行賞と批判されるから一切受けないよ』と断ったんだ。でも、その後、学校幹部に事情を聞くと『川淵さんでお願いしたいと、自分たちが猪瀬さんに頼んだんです』と。それならウソじゃないだろうと思って……」
NOと言えない性格らしい。これは、都知事選出馬もあり得るかも!?
※週刊朝日 2014年1月17日号