数年前、化学メーカー・クラレの企業CM「ミラバケッソ」で一躍有名になったアルパカ。最近では、無印良品のポスター「人類は温暖か。」で、ぬいぐるみのような愛らしい姿を目にした人も多いだろう。

実は、南米ペルーのアンデス地方に生息するラクダの仲間である。南米にはラクダの近縁種が4種類いて、大きい順にリャマ、グアナコ、アルパカ、ビクーニャと呼ばれる。このうち家畜化されているのがリャマとアルパカだ。

ラクダは気性が荒いことで知られるが、アルパカも同じ。気に入らないヤツには胃液をぶっかけ、体当たりを仕掛けてくる。アンデス山中にあるチチカカ湖で襲われ、転んでケガをした観光客は数知れず……意外と暴れん坊なのである。

「アルパカは毛並みによって2種類に分けられます。短い毛が立っているのが『ワカイヤ』(ミラバケッソのタイプ)。長く縮れた毛を持つのが『スリ』。後者は繁殖が難しく、希少性が高いんです」(那須アルパカ牧場代表・熱田晴一さん)

アルパカの毛の直径は0.02~0.03ミリメートルと繊細で、絹のようにやわらかい。アンデスの厳しい自然が、あの“モフモフ”を育んだとも言えるだろう。

写真のフランシスカさん一家は、ペルーの標高4千メートルの村、ポンゴパタに住むアルパカ農家だ。ほかに羊、牛なども放牧して暮らしている。高地のため、真夏でも気温が0度近くまで下がることも少なくない。

この村に住む先住民、ケチュアの人びとは一年中裸足で暮らしている。車のタイヤを再利用したサンダルを履いただけで、家畜を連れて石のガレ場も、急峻な氷河もホイホイ歩いてしまう。毛糸の帽子やマフラー、カーディガンは必携。それらはすべてお母さんの手編みだという。アルパカの毛糸は、さぞかし暖かいだろう……と思いきや。

「毛糸は売り物です。自分たちの服には化繊やウールなど安い毛糸を使っています」

高価なアルパカの毛糸は、貴重な現金収入源として、先住民の暮らしを支えている。

週刊朝日  2013年12月6日号