次男の毅衆院議員の選挙が容疑の舞台となった (c)朝日新聞社 @@写禁
次男の毅衆院議員の選挙が容疑の舞台となった (c)朝日新聞社 @@写禁

 日本最大の医療グループ「徳洲会」を牛耳る徳田ファミリーが崩壊した。徳田虎雄前理事長(75)や前理事長の娘たちが公職選挙法違反に問われ、次男は衆院議員の職を失う危機にある。そんな徳洲会には、選挙戦が終わり、鹿児島県警の選挙違反取締本部が解散するまで、応援に行った職員はボランティアを装うため経費精算はしない、選挙違反に問われかねない職員はすぐに逃亡させるなど、伝承された「マニュアル」まであり、「徳洲会方式」と呼ぶ人もいるという。ジャーナリストの今西憲之氏と本誌取材班がレポートする。

 本誌が入手した〈読後破棄〉と記された徳洲会グループの内部資料にも、選挙での職員動員についての詳細が記されている。

〈鹿児島へ派遣する職員の勤務取り扱いについて〉という項目では、選挙活動にかかわる職員は〈公示日までは有給休暇扱い。有給休暇がない職員は欠勤扱い〉などと規定。〈給与関係について〉では、〈欠勤扱いになった職員については、給与が減額となります。派遣日程から減額分を事前に計算し12月賞与において加算支給して下さい〉と、まさに今回の容疑を裏付けるような記述がある。また、経費については、〈領収書につきましては全て職員個人名〉などと事細かに指示されている。

 昨年12月の衆院選で動員されたある男性職員に話を聞くと、「徳洲会では選挙は業務が当たり前。ある意味、本業の医療より優先される」と打ち明けた。

 選挙戦がはじまると、毎朝6時には起床して7時から朝礼。戸別訪問や街頭活動に散り、夜は9時ごろに終礼。今回逮捕された徳美容疑者や美千代容疑者、前理事長夫人ら徳田ファミリーを前に、一日の成果の報告を求められる。

「戸別訪問で家族の人と会えないと『会えるまで帰るな』、訪問数が少ないと『何やってきたんだ』とすごい勢いでつるし上げられた職員もいる。虎雄前理事長も、入院中の病院からテレビ回線でチェックしていて、『相手をたたきのめせ』『絶対に圧勝するんだ』とハッパをかけていた。以前、毅(たけし)議員の集会に参加せずファミリーの逆鱗に触れ、懲戒免職になった幹部職員もいた。ファミリーは絶対的存在で、反論なんてありえない」

週刊朝日  2013年11月29日号