閣議に臨む安倍晋三首相(中央)、麻生太郎財務相(右)、谷垣禎一法相=25日午前9時34分、首相官邸、越田省吾撮影 (c)朝日新聞社 @@写禁
閣議に臨む安倍晋三首相(中央)、麻生太郎財務相(右)、谷垣禎一法相=25日午前9時34分、首相官邸、越田省吾撮影 (c)朝日新聞社 @@写禁

 安倍晋三首相(59)みずから「成長戦略実行国会」と命名した臨時国会。裏腹に注目を浴びているのが「特定秘密保護法案」だ。政府が恣意的に国家機密を指定しかねず、漏えいに目を光らせるといわれる“ハードボイルド”な法案だ。

 法案は特定秘密の対象を、防衛、外交、スパイ活動防止、テロ活動防止の4分野とし、国家機密の漏えいに対する罰則を最長で懲役10年まで強化した。また、行政機関の裁量で4分野での特定秘密を指定できる。

 ただし、重大な問題点を多々含んでいるとの指摘が絶えない。日本弁護士連合会は反対声明を発表した。

「特定秘密の範囲が広範かつ不明確。重罰化などにより取材活動の萎縮の問題も解消されない」

「国会に特定秘密を提供した場合、議員がどう情報を利用できるか不明確。国会が行政を監視できなくなる」

 また情報公開に詳しいある識者は「日本の機密がだだ漏れになっているのは誰もが知っていること。法律をつくって枠をはめるのは大事だ」と一定の評価はしつつも、「運用が雑すぎる」と厳しい評価。具体例として、行政機関の長による指定にチェックが利かない点や、5年ごとに特定秘密の指定期間が更新可能で、30年を超える場合は内閣の承認があれば延長でき、半永久的に情報公開されない可能性がある点を挙げる。

 官僚側にも変化が起きそうだ。09年に民主党政権が誕生した際に、「政治主導」の名の下に、報道機関との接触を禁ずる号令が発せられた。すぐに撤回されたが一時期、霞が関は一斉に貝となった。今回は法制化されるとあり、「うかつなことはしゃべれない」との心理が働き、萎縮することは間違いない。

週刊朝日 2013年11月8日号