米国では「政府機関の一部閉鎖」が、大きな話題となっている。10月17日までに連邦政府の債務額の上限が引き上げられない場合、米国債が債務不履行(デフォルト)になる恐れもある。こうした状況に、叔母から「米国やドルは大丈夫か?」と問い合わせを受けた、元モルガン銀行東京支店長の藤巻健史氏は、問題ないと言い切る。

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 米国のこれらの問題は、社会保障を完備して「大きな政府」を目指す民主党に対し、歳出を抑制して「小さな政府」を志向する共和党という両党の政治理念のぶつかり合いであり、小さな政争ではない。どういう結論を迎えるかは、米国経済の将来を占うためにも非常に興味深い。どの国でも「小さな政府」を志向しないと、いずれは財政破綻を招くと考える私は、世界経済のためにも、共和党に頑張って欲しいと思うのだ。

 叔母の質問に対する回答だが、米国は極めて健全だと思う。米国やドルが危ないというのならば日本や円は危機的となる。米国の医療保険改革法(オバマケア)は、共和党の求める修正案が通らなくても、政府の関与や支出は日本政府のそれに比べればはるかに小さい。財政の健全を考慮する米国では社会保障の支出でさえ日本のような「錦の御旗」ではないからだ。

 米国債の債務不履行問題も、自ら債務額の上限を決めているからこそ起きている。自主規制などまったくなく借金をつみ重ねている日本とは大違いだ。

 米国の債務残高の上限は現在約7兆ドル(約1620兆円)で、15.68ドル(2012年)の名目GDP(国内総生産)とほぼ同じ数字だ。一方、上限枠を自主設定していない日本の債務残高は997兆円(12年末)で、475兆円の名目GDP(12年)の2倍以上に膨れ上がっている。

週刊朝日 2013年10月25日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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