優勝の瞬間、マウンドで雄叫びを上げる田中将大投手。全球150キロ超の「8球」は見事だった (c)朝日新聞社 @@写禁
優勝の瞬間、マウンドで雄叫びを上げる田中将大投手。全球150キロ超の「8球」は見事だった (c)朝日新聞社 @@写禁

 東北楽天ゴールデンイーグルスが悲願のリーグ優勝を果たし、最大のアドバンテージを持ってクライマックスシリーズ(CS)に挑む。楽天は日本一になれるのか。2006~09年に楽天の監督を務めた野村克也氏はこう語る。

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 楽天のCS進出が2度目と言っても、私のときの09年と比べてずいぶん選手が入れ替わっちゃったな。1軍で比べると、投手が田中将大、小山伸一郎、青山浩二、野手では聖沢諒、嶋基宏くらいか。(星野チルドレンとして売り出し中の)銀次、枡田慎太郎は2軍だった。銀次はバッティングがいいのでちょこちょこ2軍の試合で活躍していたけれど、高校を出たばかりだから、様子見ということでとくに注目していなかった。まあとにかく寄せ集めのチームだから、投手のローテーションを固めるのに必死で、野手までなかなか目が届かなかったよ。

 CSで今でも記憶に残っているのが、日本ハムとの第2ステージの第1戦で、スレッジにサヨナラ逆転満塁ホームランを打たれて負けたことだな。あれでシリーズ全体の流れが変わってしまった。4点差の9回で福盛をクローザーに送り込んだら、こんこん打たれて満塁や。勝負球となる「最後の一球」というところで福盛が捕手のサインにクビを振ったのを見て、まあ身の毛がよだつというか、全身から血がピャァーと引いていったのを覚えている。

「あかん、こいつストレート投げるつもりや」

 スレッジは直球のみのバッターで、フォークだけ投げとけば大丈夫なんよ。それは試合前でも確認してたのに、ピッチャーというのは最後はストレートで格好良く締めたいんやろうね。案の定ストレート投げて、カーンや。

 私は野球は「頭でするスポーツ」だと思っているんだけど、星野監督のは精神野球だね。「気合が足らん」とかよく言ってるじゃん。投手出身の監督ってどうしてもそうなるんだよ。監督は選手時代の経験がベースになるでしょ。投手というのは「俺の球を打てるなら打ってみろ」という強靭(きょうじん)な精神力が第一条件だから、精神性を大事にする指揮になるんだよ。今の選手はみんなおとなしいし厳しい家庭環境に育っていないから、逆に星野みたいな監督が時代に合っている。

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