日本の技術力を支える町工場が“ダメ銀行員”につぶされる?(写真はイメージ) (c)朝日新聞社 @@写禁
日本の技術力を支える町工場が“ダメ銀行員”につぶされる?(写真はイメージ) (c)朝日新聞社 @@写禁

 問題発覚から1週間たった10月4日、みずほ銀行は「暴力団融資問題」の記者会見を開いた。内部調査で2年も前から問題に気づいていながらも放置、というこの銀行の体質が明らかになった。「暴力団排除もできないあなたたちには責任をとっていただきたい!」と、上司に啖呵(たんか)を切る「半沢直樹」のような銀行員は実在しないのだろうか。

 これまで数々の中小企業から相談を受けてきた事業再生コンサルタントの吉川博文氏は、「銀行の本来の役割は会社の潜在能力を見抜いて融資することですが、銀行にそこまでの人材がいないのが現実です」と語る。吉川氏が顧客の中小企業と仕事をする中で見聞きした“ダメ銀行員”の話を紹介しよう。

 東京の有名大学を出て地方銀行に就職した銀行員の例。地元では超エリート扱いで出世を約束され、メガバンクのような切磋琢磨(せっさたくま)の競争も激しくないため、勘違いする人がいるのだ。

 東京都墨田区のある金属加工の町工場は、業績が悪かったため、メーンバンクのとある地銀に返済条件の緩和を求めた。担当の銀行員は30歳前後の若手だったが、高圧的に足を高い位置で組んでソファにそっくり返り、自分の父親ほどの年齢の社長に向かって、「あなたは経営のことがわかってるんですか!?」と、怒鳴りつけた。社長は自宅まで担保に入れているため、銀行員の機嫌を損ねないように黙って聞いていた――。

 ドラマ「半沢直樹」でも、宿敵の大和田常務には保身のために半沢の父が経営するネジ工場への融資を止め、自殺に追い込んだ過去があった。中小企業をいじめる“ミニ大和田常務”は、残念ながら実在するらしい。

週刊朝日 2013年10月18日号