「半沢」の最高視聴率獲得シーンも 土下座の文化は男性社会の産物 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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「半沢」の最高視聴率獲得シーンも 土下座の文化は男性社会の産物

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福島第一原発事故で避難した人々に土下座した東電幹部ら (c)朝日新聞社 

福島第一原発事故で避難した人々に土下座した東電幹部ら (c)朝日新聞社 

 TBSの人気ドラマ「半沢直樹」が第7話で瞬間最高視聴率34.5%を記録した。堺雅人演じる主人公が土下座するシーンだ。視聴者の「土下座を見たい」という心理の表れかもしれない。また、9月28日には、阿部サダヲ演じる主人公が土下座など謝罪術を駆使し、ケンカの仲裁から国家存亡の危機にまで立ち向かう映画「謝罪の王様」(水田伸生監督)も公開される。

 かつては時代劇で目にすることが多かった「土下座」だが、最近ではドラマ、映画、漫画だけでなく、東京電力の謝罪など実社会でもやたら、目につくようになった。選挙演説中に土下座をする政治家も目立つ。しかし、今の人たちは、土下座をされても戸惑うか、ひくだけじゃないかという指摘も。

 では、現代の土下座に誠意を伝える効果はないのだろうか。企業の危機管理を担うリスクヘッジ代表・田中辰巳氏が語る。

「相手にさんざん責められてから土下座をするのでは効果がありません。やるなら相手の虚を突く形で即座にするべきです」

 2003年、「西部警察」(テレビ朝日)の撮影中に人身事故が起きたとき、石原プロ社長(当時)の渡哲也はすぐ被害者宅を訪問して土下座で謝罪をしたという。さらにドラマの制作中止という厳しい決断を異例の早さで発表したことも話題となった。

「渡さんほどの人にいきなり土下座をされたら、誰もが驚いて『そこまでしなくても……』と許してしまいますよね。実際、被害者たちは怒りを収め、『ドラマを続けてください』という声も上がったといいます」(田中氏)

 同氏によれば、企業の危機管理に必要なのは「感知・解析・解毒・再生」の4つのステージだ。「解毒」とは、消費者の心を「癒やされる→腑に落ちる→許す→忘れる」と変化させるために、応急処置・誠実な情報開示・心に届く謝罪の言葉・確実な再発防止策・厳しい処分などを行い、自らが発した毒を取り除く作業である。

「土下座は、タイミングさえ間違えなければ相手の心に届く謝罪法であり、十分『解毒』の効果があると言えます。だから、現在でも企業の謝罪会見などでしばしば土下座姿が見られるのですね。とはいえ、情報開示や再発防止策などが不十分のまま、土下座だけしても許されないのは言うまでもありません」(同)

 ところで、ドラマの中でも現実世界でも、土下座をするのは男性ばかりだ。選挙支援を訴え、土下座した女性候補者もいたが、例外中の例外と言える。謝罪会見に登場する女性役員が少ないという現実もあるが、やはり土下座は男性の習慣と見るのが一般的だろう。その理由を、精神科医の香山リカ氏はこう分析する。

「女性の多くは、社会の中で屈辱的な目にあうことに慣れています。いまだ男性中心の日本社会では、女性は下げたくない頭を下げ、笑いたくない場面で愛想笑いすることを強いられがちです。ときには男性社員の理不尽な要求やセクハラまがいの行為にも耐えなければならない。地位のある女性でも、たいてい年齢や容姿に関する屈辱的な中傷に耐えています」

 一方、男性はある程度地位があれば屈辱的な扱いを受ける機会などほとんどない。そんな男性が地位をかなぐり捨てて土下座をするからこそ、される側も深く受けとめるのだという。

「女性は日頃から、いわば心理的に土下座をしているようなものです。そんな女性たちにとって、形だけの土下座にはなんの意味もありません。ただ、屈辱的な扱いには慣れていますから、もし本当に土下座すれば許されるなら、『土下座くらい、いくらでもしてやるわ』と言う女性は少なくないでしょうね」(香山氏)

 日本人が好む土下座は、男性社会ならではのビジネスツールと言えるかもしれない。

週刊朝日  2013年9月20日号


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