横浜市が「待機児童ゼロ」を実現できた理由 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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横浜市が「待機児童ゼロ」を実現できた理由

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国は、横浜方式を横展開することで待機児童ゼロを実現できるのか (c)朝日新聞社 

国は、横浜方式を横展開することで待機児童ゼロを実現できるのか (c)朝日新聞社 

林文子(はやし・ふみこ)1946年生まれ。ダイエー代表取締役会長兼CEO、日産自動車執行役員などを歴任。2009年8月に横浜市長選に立候補し、初当選。1期目(撮影/慎芝賢)

林文子(はやし・ふみこ)
1946年生まれ。ダイエー代表取締役会長兼CEO、日産自動車執行役員などを歴任。2009年8月に横浜市長選に立候補し、初当選。1期目(撮影/慎芝賢)

 待機児童全国ワーストから3年で「ゼロ」を達成した横浜市。横浜市の待機児童数は2010年4月時点で、全国最多の1552人だった。その前年 8月に市長に就任した林文子市長(67)は「待機児童ゼロ」という明確な目標を掲げることからスタートしたと言い、続けてこう説明した。

*  *  *
 私は約4年前に市長として行政の世界に入りました。それまでは小売業などの経営者をしていましたので、組織運営や目標設定などは民間企業時代の考え方がベースになっています。当初、待機児童をゼロにしたいとまわりの人たちに相談すると、「受け皿を造れば造るほど希望者が増えて、いたちごっこになる。ゼロにすると言うと、あとで大変になりますよ」とアドバイスを受けました。待機児童対策は、それほど困難な課題とされていたのです。しかし、私は「ゼロ」を目指すと言い切りました。漠然とした目標では、絶対にゼロにはならないでしょう。たとえば、自動車販売で今年は1万台売ると目標設定をすると、数字ではなく、お一人おひとりのお客様の顔が浮かびます。ゼロにすると言い切ることで、単なる数字ではなく、お困りの保護者お一人おひとりの顔が浮かんで、寄り添ったご支援ができると思いました。

 それに、以前からほかの経営者の皆さんとお話をして、「優秀な女性が出産・育児を契機に退職していく」という悩みを聞いていましたし、私自身が経営者として、優秀な女性社員が子供を保育園に預けられず、泣く泣く退職していく姿を目の当たりにしてきました。だからこそ、待機児童問題は絶対に解消しなければならないと感じていました。私は、困難な問題であっても挑戦する決断をして、実践すればできるという「トップの本気」を示しました。

 成功した大きな要因のひとつは、ニーズを徹底的に調べたことです。就学前児童をもつ保護者の皆様へのアンケート(08年実施)の結果を分析すると、現在働いていない保護者の約7割が働きたいという希望をお持ちでした。さらに、そのうち約9割はフルタイムではなく「短時間勤務」を希望し、「週3日、1日4時間」がもっとも多かったのです。「週4日、1日4時間以上」が認可保育所の入所要件なので、これにあたらない人が多かったんです。

 働き方の希望は多様になってきていますから、そういう方々にフィットする政策をやっていかなければならないと気づきました。それが、認可より入所要件の緩い幼稚園預かり保育や一時預かりの拡充につながりました。また、NPO法人などを活用した家庭的保育をスタートさせ、市の独自の基準で認定する認可外保育施設「横浜保育室」も拡充しました。ニーズを丁寧に把握することが、認可保育所を整備すれば良いという従来の既成概念にとらわれない考え方に結びついたのです。

 ニーズに見合った整備を進めるために、市の職員は地図を広げて街を歩き回りました。全18区に緊急保育対策担当の専任係長を1人ずつ置き、「どこがいちばん待機児童が多いのか」「これから多くなるのはどこか」、現場の声を聞いていきました。これまでだと、運営事業者に対し「土地がありますけど、保育所を開設してみてはどうですか?」という姿勢でしたが、そうではなく、「ここに保育所が必要だ」と決めて取り組んでいったのです。

週刊朝日  2013年7月19日号


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