田原総一朗 「『原発ゼロ』は福島事故処理の免罪符ではない」 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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田原総一朗 「『原発ゼロ』は福島事故処理の免罪符ではない」

連載「ギロン堂」

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 7月4日、参院選が公示された。各党がさまざまな政策を打ち出しているが、ジャーナリストの田原総一朗氏は、原発に関してどの党にも無責任さを感じるという。

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 参院選が迫ってきて、与野党がそれぞれに経済政策、憲法改正、原発政策などで独自の方策を打ち出している。6月28日の「朝まで生テレビ!」でも全党の幹部たちの主張を聞いたのだが、何とも引っかかったのが、原発政策であった。

 原発については、国民の多くが強い不安を抱いている。その不安に対し、政権与党の自民党は「慎重に」と前置きしながら、原発を推進する姿勢を示した。他の全党は「原発ゼロ」を目標とすると強く主張した。

 だが、いささか乱暴な言い方をすると、推進の自民党も「原発ゼロ」の他の全党も、原発に対し責任がなさすぎると思わざるを得なかった。

 自民党の幹部たちに、まず「トイレのないマンション」問題、つまり核のゴミの問題について問いただした。どの原発も当然ながら核燃料を燃やしている。そして、燃やした核燃料は、中間処理、つまりガラス状に固めて貯蔵し、それをいずれの地域かで、どういう形かで最終処理をしなければならないのである。これをバックエンドという。

 ところが、バックエンドについては、現状では中間処理すらできておらず、最終処理をどこで、どういう形で行うのか、見当もついていないのだ。そのことを自民党の幹部たちに問うたが、誰もが困惑した表情を示し、言葉を濁すばかりであった。

 さらに早急の課題としては、深刻な事故を起こした東京電力の福島第一原発を廃炉にしなければならないはずである。この廃炉作業は少なくとも30年以上かかり、費用も確実に数兆円に及ぶ。それに年間千人以上の技術者が必要である。廃炉作業の主体は、どこが担うのか。費用や大量の技術者はどうやって供給するのか。はっきりしているのは、東電には無理だということだ。

 こうした難問に政府はどういう形で対処するのか。まだ何も決まっていないはずである。私は執拗(しつよう)に問うたが、答えは返ってこなかった。そして、ついには「推進」という言葉まであいまいになってきた。

 こうした私の自民党への追及を、他の全党はひとごとのように聞いていたが、実は、「原発ゼロ」を主張するどの政党にも自民党と同じ責任があるのだ。現実には、少なくとも30年以上は原発と付き合わざるを得ないのであり、当然ながら、燃やした核燃料の最終処理にも責任を持って取り組まなければならないからだ。もちろん、福島原発の廃炉作業からも逃げるわけにはいかない。

 私が、何とも引っかかったのはこの点である。もちろん、もしも自民党がこうした難問に対する責任体制を確立しないままに、なし崩しにズルズル原発を推進しようとすれば、それは危険極まりない暴挙で断じて認めるわけにはいかない。

 だが、「原発ゼロ」を主張する全政党が「原発ゼロ」を理由付けとして、おびただしい難問とかかわりがないと考えているとすれば、それは無責任極まりないことである。民主党、公明党、みんなの党などの原発を本気でとらえている議員たちに個々に問うと、誰もが原発の難問から逃げるわけにはいかないことを認める。ところが党全体となると無責任になってしまうのだ。

 原発ゼロを目指す政党も、原発推進を目指す政党も、少なくとも30年間は責任を持って取り組まなければならない課題はほとんど変わらないことを自覚すべきである。

週刊朝日  2013年7月19日号


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田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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