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ポール・モーリアを筆頭に「イージー・リス二ング」と呼ばれ、1970年代に大ヒットしたインストゥルメンタル系音楽の再ブームが起こっている。リチャード・クレイダーマンら往年の大スターらが続々と来日する。日本でイージー・リスニングが愛されている背景には、流行の移り変わりや生活様式が関係しているようだ。

 イージー・リスニングが日本で長く聴き継がれるのは、BGMとは違う聴き方があったからだ。しかもその裏にロック・バンドの存在があったというから驚きだ。

 時は1971年、ビートルズを日本に招聘して名を上げた「キョードー東京」は、「ロック・カーニバル・シリーズ」と銘打ったロック・コンサートを、毎月行っていた。当時の秘話を、代表取締役社長の山崎芳人さん(65)はこう回顧する。

「当時のお客さんは、ロック・コンサートをフラストレーション発散の場にしていました。71年7月のグランド・ファンク・レイルロードの公演では、スタンド席から観客が大勢フェンスをよじのぼり、止めようとする僕ら若い社員にビール瓶や石が投げられました」

 また同9月のレッド・ツェッペリンの公演では、手荷物検査の遅れで満足にステージを観られなかった観客が怒り、客席に置かれたチラシに火をつけて大騒ぎになったという。

「そんな事態が続き、ロック・コンサートの運営が困難になりました。代わりに72年1月から、イージー・リスニング系の『ラヴ・サウンズ』シリーズを始めました」(山崎さん)

 これが瞬く間に人気を得た。2枚で500円引きのペア・チケットも用意され、デートの定番になる。75~81年のニッポン放送の番組「ラヴ・サウンズ・スペシャル」のディレクターを務め、現在は同局の専務取締役である宮本幸一さん(63)は当時の人気を、「ビートルズが70年に解散した後、ハード・ロックが苦手なポップス・ファンが聴き始めたのです」と、分析する。

 その頃の生活様式の変化も人気に拍車をかけた。

「団地が次々に建ち、2LDKという言葉が出てきた頃です。憧れの団地に住み、リビング・ダイニングがあると、ステレオを置きたくなる。そこで聴くのは、気持ちを豊かにするイージー・リスニングが似合った。今でいう、癒やしの音楽の先がけだったと思います」(宮本さん)

週刊朝日 2013年5月31日号