和歌山カレー事件 「決め手」のヒ素鑑定に真逆の指摘 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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和歌山カレー事件 「決め手」のヒ素鑑定に真逆の指摘

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 夏祭り会場でカレーを食べた4人がヒ素中毒で死亡した「和歌山カレー事件」から、まもなく15年。ここへきて、死刑判決のよりどころとなった「ヒ素鑑定」の信頼性について、衝撃的な論争が湧き起こっているのだ。

 カレー事件では、林真須美死刑囚の自宅にあったプラスチック容器から見つかったヒ素と、犯行に使用された紙コップに付いたヒ素が「同一」とされた鑑定結果が「決め手」となった。捜査段階で鑑定したのは、東京理科大の中井泉教授ら。ヒ素に含まれる不純物としてスズなど4種類の重金属を調べた。これらの不純物から両者の同一性を導いた。

 その鑑定に異議を唱えているのが、京大大学院の河合潤教授だ。河合氏は約3年前、林死刑囚の弁護団から鑑定について意見を求められ、自宅のヒ素と紙コップのヒ素は異なるものだという衝撃の結論を出した。同氏が注目したのは、ヒ素に含まれていた不純物のモリブデンや鉄の分量が、両者では明らかに違い、まったくの「別物」と結論づけたのだ。

 昨年7月、河合氏の指摘を受けた中井氏が学会で発表に立ち、林死刑囚の自宅台所のプラスチック容器と、紙コップに付着したヒ素以外に、林死刑囚の親族や知人宅から発見されたヒ素、計7点を鑑定したと説明した。河合氏は言う。「プラスチック容器と紙コップのヒ素は同一で、親族宅などのヒ素とは違うから、林死刑囚が犯人となったはず。だが中井氏は7点とも同じだ、と。ビックリですよ」。

 中井氏は本誌の取材に、「私は検察側から、プラスチック容器と紙コップに付いたヒ素の同一性の証明を求められました。鑑定して結果が同一だったのでそう鑑定書に書いた。きれいに鑑定できたという自信があり、検察側も満足していた。河合氏の理論は学術的。鑑定書と学術論文は違う。河合氏の指摘はズレている」と反論する。

 5月19日、北海道で開かれる学会で、河合氏は中井氏の鑑定について新たな見解を述べるという。中井氏もその学会に参加予定で、その場で直接反論したいとしている。また5月8日には、カレー事件の捜査に関わった県警科学捜査研究所の元主任研究員が和歌山地裁で、別の事件捜査での証拠捏造(ねつぞう)などの容疑を認めている。

 カレー事件はどこへ向かっていくのだろうか。

週刊朝日 2013年5月24日号


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