作家の室井佑月氏は、民主党主催のおもしろい告知を見つけたという。

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 この春から息子が寮のある学校に入学した。

 息子の性格を考えれば、寮生活は合うと思った。だけど、心配になってこんな手紙を送っておいた。ウザがられるのは承知して。

「まわりの状況を把握すること! 自分をさらけ出すな、とはいわない。ただ、自分という個性を出したいなら、相手の個性を尊重しなければならないし、まわりの状況もわかっていないといけない」というような。

 それ以外にも「自分の居心地の良い場所を見つけろ」などと、くどくど書いておいたが、まったく返事がないのは、上手くやっているからなんだろうか。

 とにかく息子がいなくなって、自分の時間が持てるようになった。そして、久しぶりにネットを眺めていたら、面白い告知を見つけた。

「とことん話し合ってみたい。何がそんなにダメだったのか? そして、難しかったのか?――民主党公開大反省会――元総理・元大臣の逃げられない夜――2013年5月11日に開催」というもの。

 なんでも、菅直人元首相や枝野幸男元経産相が出て来るらしい。

 面白そうなイベントじゃ。友達を誘ってあたしも見にいきたいな、と思ったら、参加できるのは30歳以下の若者200人なんだって。残念。

 参加者は挙手などではなく、持参した携帯電話を使い、匿名で質問やコメントを壇上の議員たちに送るという。でもって、イベント開催の場所は……民主党本部ぅ?

 えっ、マジメなイベントだったんだ、これ。

 まあね、本物の菅直人や枝野幸男が出て来るんならそうなのか。

 あたしはすっかりお笑いイベントかと思ったよ。菅さんと枝野さんは、こういうことをきっかけに芸能界デビューでも狙っているんじゃないかって。自分らの罪をマジメに追及されると困るから、テレビなんかに顔を出し、お亡くなりになったハマコーさんみたいな立ち位置を狙っているのかと思った。

 けど、マジなイベントだとすれば、民主党のみなさんはいまだに、「何がそんなにダメだったか」わかってないってこと?

 マジでぇ? だとすれば、もしかして今の日本で、わかっていないのは民主党のみなさんだけってこと?

 さんざんみんなにいわれてきたじゃん。マニフェストを守らないばかりか国民を裏切るような真似ばっかしてって。国民の声は、今までぜんぜん耳に入ってなかったかったか? すげぇな。

 この空回りぶりが、なんだか哀れにもなってきた。

 あたしは寮にいる息子に書いた手紙を、民主党本部に送ってさしあげたい気持ちになった。「自分をさらけ出すなとはいいません。ただ、その前にまわりの状況を把握しろ」って。

 送らなかったけど。考えてみたら、一度は応援した民主党、今はもう好きじゃなかった。

週刊朝日 2013年5月17日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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