「今回の判決で議員の身分がなくなってしまうのでしょうか?」広島1区選出の岸田文雄外相(55)の地元事務所には、そんな問い合わせの電話が相次いだという。

 昨年の衆院選をめぐる一連の「一票の格差」訴訟で、広島高裁は3月25日、「選挙無効」という判決を下した。「違憲」からさらに踏み込んだ歴史的な判決だが、蜂の巣をつついたような騒ぎになったのは、現役外相の岸田氏が選出されている広島1区も対象に含まれていたからだ。

 今回、全国各地の高裁・支部で出た16件の判決を見ると、「抜本的な見直し」のハードルはより高くなったようだ。選挙区の格差を2倍未満に抑えるため、駆け込みで法案を通した小選挙区定数を「0増5減」する案については、「各地の高裁が『格差是正とは言い難い』としています。一連の判決で小手先の調整ではすまなくなった」(自民党幹部)。

 楽観論はどこへやら、広島高裁判決の翌日の広島高裁岡山支部は、「判決が確定した段階で選挙は無効」と踏み込んだ。

 それでも自民党は年内に下される最高裁判決までに、「0増5減」関連法案を通すつもりだという。こうした状況を見て民主党は「0増5減」について反対を表明。対案として小選挙区30削減案を打ち出したが、イマイチ説得力に欠ける。

週刊朝日 2013年4月12日号