警察に4人もの「誤認逮捕」を犯させたパソコン(PC)遠隔操作事件は、好きの片山祐輔容疑者(30)が威力業務妨害容疑で逮捕され、“解決”に向かうかに思われた。だが、片山容疑者は容疑を完全否認、ここにきて警察の苦戦ぶりが浮かび上がっている。

「(片山容疑者の)趣味は映画だというんで、最近見たのを聞いてみると『レ・ミゼラブル』だという。無実の人が代わりに捕まるのを見過ごせず、自分を犠牲にして助けるジャン・バルジャンの生き方に感動したと言ってましたね」と語るのは、足利事件で冤罪を晴らした実績もある佐藤博史弁護士だ。同じ事務所の弁護士が国選弁護人となって相談を受けたことから共闘を始めた。

「最初は彼こそ犯人だと思っていた。でも会ってみると、想像と印象が違う。よく話すし、フランクで人懐っこい。中学時代にいじめに遭い、回遊性人格障害を患ったこともあるそうだが、最近は調子がよかったと言う。年末年始にはタイやイタリアを旅行し、ツアー仲間と仲良くなった。罪を犯した人が呑気に旅なんかに行きますかね」

 誤認逮捕された人たちの気持ちを接見の場で問われ、片岡容疑者はきっぱり「私も同じ立場です」と言い切ったという。ジャン・バルジャンは最期に“安らかな心”を得たが、果たして――。

週刊朝日 2013年3月8日号