昨年12月23日に放映されたフジテレビの番組でのこと。安倍晋三首相は日銀が今月の金融政策決定会合でインフレターゲットの設定を見送れば、日銀法の改正に着手する考えを明らかにした。だが投資助言会社「フジマキ・ジャパン」の代表、藤巻健史氏は、これが安倍首相の「日銀いじめ」ではないのかと指摘する。

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 世の中、青少年のいじめが大問題になっているが、安倍首相の言動は日銀に対する「いじめ」じゃないの?

 白川方明(まさあき)総裁もだらしない。あまりにも紳士的すぎて、典型的な「いじめられっ子」に見えてしまう。日銀総裁たるもの毅然(きぜん)と、「私は職を賭しても受け入れられません」と言うべきだった。日銀の権威も、金融政策の権威も、日銀券の権威もガタ落ちである。日銀は「力強い父さん」でなくてはいけないのだ。

 インフレターゲット設定の是非は別として、日銀が政府の言いなりになるという印象は対外的にも極めてまずい。「どうせ将来、日銀は政府の言いなりになって紙幣を刷りまくるんだろう」と日本国民どころか外国人も思ってしまう。日銀が政府の紙幣印刷所に成り下がったと見られてしまえば、ハイパーインフレの道まっしぐらだ。

 インフレターゲットは、そこまでの犠牲を払って行う政策ではない。消費者物価指数と景気との間に相関性はあまりないからだ。たしかに景気がよくなればインフレになるのは感覚的にわかる。しかし、「逆も真なり」ではなさそうだ。インフレになれば景気がよくなるか? これは大いに疑問なのだ。

週刊朝日 2013年1月18日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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