「CEATEC JAPAN 2012」で展示された4Kテレビ(2012年10月10日撮影 資料写真)
「CEATEC JAPAN 2012」で展示された4Kテレビ(2012年10月10日撮影 資料写真)

 日本でしか通用しない特殊な発達を遂げた製品を「ガラパゴス」と呼ぶが、携帯電話がそうなるはるか前に、「日本は世界で稀な『ガラパゴステレビ』を作り出していた」とニュースキャスターの辛坊治郎氏は振り返る。それはアナログ横長テレビのことだったが、辛坊氏は同じテレビ市場に「新たなるガラパゴス」の芽を見たという。先ごろ開かれた家電見本市でのことだ。

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 その名は4Kテレビ。4Kとは、現在のデジタルハイビジョンの4倍画質を意味する。中には8K、すなわち16倍の画質を売りにする商品も注目を集めていた。

 しかし、素朴に思う。このテレビで、一体何を見ようというのか。テレビ局は、デジタルハイビジョンを超える画質の番組を放送する計画を持っていない。それどころか、よほどの技術革新がない限り、各放送局に割り当てられている電波では、現在の画質を超える放送をするのは不可能だ。つまり、4倍画質のテレビを買っても、そこに映るべき4倍画質のソフトが存在しないのだ。

 技術者は「こんなこともできます」と高みを目指す。しかし、商品開発においては「客が欲している物は何か」という視点が欠かせない。横長テレビが爆発的に普及した時代のように、国内市場だけで飯が食える時代ならいい。しかし、急速に人口が減って国内マーケットが収縮する時代に、十数万人の傘下従業員を抱える大メーカーが、一部のマニア向け製品を作るのでは未来はなかろう。

 日本の家電メーカーは、発想の転換が必要ではないか。

(週刊朝日 2012年11月30日号「甘辛ジャーナル」からの抜粋)

週刊朝日 2012年11月30日号