長引く円高を背景に加速してきた日本企業の中国進出。しかし、ここにきて、現地の人件費が高騰するなど経営不振に陥る企業が続出。逃げ出すところも相次いでいるという。

 さらに、通関手続きの厳格化も「脱中国」を加速させる要因となる。水産物加工のほとんどは、日本やロシア、ノルウェーなどから魚を輸入して加工している。

「餃子などの調理済み冷凍食品会社も、調味料などを日本から持ち込んでいます。税関でモノが滞っており、こうした企業はいまだに生産の縮小を余儀なくされていると聞きます」(流通業界に詳しいジャーナリスト・内田裕雄氏)

 しかし、実際、中国から撤退するとなると、心理的に難しいのが現実だ。

 5年前に山東省の国有企業と合併工場を新設した冷凍食品会社メーカーの社長は複雑な心境でため息をつく。

「過去の投資資金を回収できないうちは、撤退する決心が鈍る。中国に設備をくれてやるようなもの。ノウハウも取られ、今後は競争相手になるだけです」

 事務的にも難しい。役所に嫌がらせを受ける可能性もあるからだ。

 こうしたなか、日本では中国から上手に撤退するノウハウを教える「脱中国セミナー」が盛況だ。都内で開催されたセミナーに出席してみると、どの会場も満員御礼。真剣なまなざしの経営者からの質問が相次いでいた。

 隣の席に座っていた楽器製造会社の社長に話しかけると、こう言った。

「私はこれから中国に進出しようと思っている。13億人の市場はやはり魅力的。だけど、何が起こるかわからない。だから、進出する前から撤退のノウハウも学んでいるんですよ」

週刊朝日 2012年11月30日号