11月6日に投開票された米大統領選挙は民主党のバラク・オバマ大統領が共和党のミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事に勝利した。景気低迷、高い失業率などの経済失策が弱点と思われたオバマ大統領の再選を後押ししたのは、全米で強まっている格差反対の声であると田原総一朗氏は洞察する。

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 オバマ勝利の報道の陰で、日本の多くのメディアが報じていないが、アメリカの確実な「チェンジ」を示す出来事が起きている。上院選にマサチューセッツ州から立候補した民主党の女性が初当選したのだ。ハーバード大教授のエリザベス・ウォーレンである。

 彼女は、社民党の福島瑞穂党首を数倍ラジカルにしたようなリベラリストだ。消費者保護の立場からウォール街を痛烈に批判して脚光を浴びた。いわば、格差反対の過激派ともいうべき女性だ。そんな彼女の当選が、アメリカでは大きな話題になっている。

 つまり、エリザベス・ウォーレンに代表されるリベラルの格差反対の声が全米で強まっており、それがロムニーを落選させたのだ。

 リベラル色が強くなったアメリカは、日本との関係をどう考えるか。はっきりいって、いま日本ではナショナリズムの流れが強まっている。

 アメリカにいる日本人たちは、リベラル色の強まったアメリカは、日本のナショナリズムにきわめて神経質になっているとみている。特に従軍慰安婦問題などで、日本が「旧日本軍の関与はなかった」などという表明をすると、日米関係が一気に悪化すると大変心配している。

週刊朝日 2012年11月23日号