原発を再稼働させたことによって、将来何か問題が起こったときの責任を今から押し付け合う政府と原子力規制委員会。作家の室井佑月氏は彼らを「お尻の汚い人々」と一刀両断する。

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「原発関係者全員、誰もケツ拭かない。ケツを拭かない国家に明日があると思いますか?」

 これは、音楽雑誌に載った矢沢永吉さんの言葉だそうだ。さすが永ちゃん。永ちゃんカッコいいっ!

 そうだよ、誰かがケツ拭けよ。なにが起きてもケツを拭かないとはなから決めている人たちに、物事の決定権なんてないに違いない。

 前原誠司国家戦略相は、朝日新聞などのインタビューに、

「独立性の高い(原子力)規制委が安全だと決めたものを、また国で判断するのは論理矛盾。規制委に申し出る事業者は原発を動かしたいのだから、安全が担保されたら再稼働する」

 と発言した。

 いっぽう規制委の田中俊一委員長は、

「再稼働判断は事業者か国にしていただく」

 と答えた。

 つまり、政府も規制委も、原発の再稼働において、なにか問題が起こったときの責任を押し付け合っているわけだ。

「最終決定したのは俺らじゃねーから」

 今からそんな風に言いたいのが見え見えじゃ。なのに、原発再稼働について、「じゃ、やめとこうか」とは絶対にならない、気持ちの悪い話し合い。

 やっぱ、これは永ちゃんの言う通り、事故が起こっても誰もケツを拭かなくて済んだ、という現状がいけないのだ。

週刊朝日 2012年10月26日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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