中高年女性に多い病気に、骨盤内の臓器が膣(ちつ)から出てしまう骨盤臓器脱がある。治療法として、欧米で普及している、メッシュを使って骨盤底の筋肉などを補強するTVM手術を実施する病院も増えてきた。

 札幌市に住む主婦、鈴木眞智子さんがテレビ番組で骨盤臓器脱のことを知ったのは56歳のとき。いまから4年ほど前だ。

 鈴木さんは趣味のエアロビクスで、事前に何度トイレに行っても、ジャンプしたときの尿漏れが止められなかった。テレビ番組の患者と自分が重なり、すぐに近くの病院に行った。

 骨盤臓器脱は、どの臓器が膣から出るかによって「子宮脱」「直腸瘤(りゅう)」「膀胱(ぼうこう)瘤」などとも呼ばれ、総称して骨盤臓器脱という。たび重なる出産や、重いものを持つなど腹圧がかかる生活習慣、便秘、肥満などが原因で、骨盤底の筋肉群や靭帯が弱くなり臓器を支えられなくなる。尿漏れ、排便障害などを併発し、著しくQOL(生活の質) が低下する。

 鈴木さんが受診した近所の産婦人科では子宮脱と診断され、子宮を切除して膣を縫い合わせる手術をすすめられた。インターネットで調べると、子宮をとらない最新式の「TVM手術」を時計台記念病院で実施していると知り、受診した。

 TVM手術は、合成樹脂のメッシュを挿入して、弱くなった骨盤底の筋肉や靭帯を補強するものだ。診察の結果、鈴木さんは子宮脱ではなく直腸瘤であると診断され、直腸瘤のTVM手術を受けた。その翌年、親の介護などで再診を受けられずにいるうちに膀胱瘤になり、今度は膀胱瘤のTVM手術を受けた。骨盤内の臓器のバランスは微妙で、手術により別の臓器が下がることもあり得るという。

「いまは股間に違和感を覚えずに快適に生活しています。手術を受けてよかったと思います」(鈴木さん)

※週刊朝日 2012年9月7日号