日本は世界有数の「不眠大国」だ。成人の5人に1人が「不眠症」に悩んでいるという厚生労働省の報告もある。杏林大医学部精神神経科の古賀良彦教授は、

「日本人の約8割は睡眠に悩みや不満を抱えていて、日常生活に影響が出ている『不眠状態』にあります」と指摘する。

 睡眠の質は体内時計や健康状態、気温や明るさなどに左右されて良くなったり悪くなったりする。

「加えて、昨年行った実験で、スマホなどの液晶に使われる『発光ダイオード(LED)』 から多く出ている『ブルーライト(青色光)』には、睡眠障害につながる可能性があることがわかったのです」(古賀教授)

 青色光とは、380~495ナノメートル前後の波長が短い光のこと。光は波長が短くなるほどエネルギーが強くなる。青色光は人の目で見ることができる光の中では最も強い。

 不眠を招くだけではない。青色光の強いエネルギーは、目の網膜を傷つける可能性もあるという。

 青色光が人に与える影響を研究する「ブルーライト研究会」の世話人代表を務める坪田一男・慶応大医学部眼科教授はこう話す。

「青色光よりさらに強いエネルギーを持つ紫外線は細胞を老化させますが、目の場合はほとんどが角膜と水晶体で吸収されます。しかし、青色光は網膜まで届くので、網膜を老化させて、視力の低下や視覚のゆがみを引き起こす『加齢黄斑変性』などのリスクを高めるのでは、との指摘もあります。この問題については、現在、研究が進められています」

 ただ、青色光は・絶対悪・ではない。坪田教授らとともに前出の研究会で世話人を務める南青山愛クリニックの井手武副院長はこう指摘する。

「人は、青色光を含む日差しを浴びることで体内時計を調節しているので、適量を浴びないとこちらも不眠につながります。遅い時間帯に過剰に浴びるのが心配なのです」

※週刊朝日 2012年8月17・24日号