土用の丑の日が近づくにつれてウナギの高騰が連日叫ばれていたが、直前になって多くのスーパーなどで値下げをする動きが相次いだ。この様子をみた投資助言会社「フジマキ・ジャパン」の代表であり、「伝説のディーラー」の藤巻健史氏は、この夏の電力需給を引き合いに出してこう指摘する。

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 今年はウナギの値段の高騰ぶりが目立った。養殖に必要な稚魚シラスウナギの慢性的不漁のせいらしい。私も4月に、ウナギの名所、静岡県浜松に講演に行って専門店で「ウナ重」をごちそうになって以来、高すぎて食べていない。

 と思っていたら、「7月27日の『土用の丑の日』を前にスーパーなどでウナギの値下げが相次いでいる」というニュースを読んだ。相場高騰の結果、客足が急速に遠のき販売量が激減、そのテコ入れ策としての値下げだそうだ。

 需要が値段によって増減する。これは、まさに経済学のイ・ロ・ハである。夏場の停電リスクを減じる方法もこれがベストである。臨機応変な電気代の上下である。夏の間だけの値上げもいいだろう。

「電力使用制限令の発動で需要を減らす」という強制的なやり方は社会主義的であるし、「節電」という精神論に基づく低減策も疑問である。

 電力の需給を料金でコントロールできないのは、供給が独占だからだろう。独占だと発電サイドに料金を下げるモチベーションが薄くなる。だから料金は認可制になるし、認可制になれば認可するほうや政治家にとってもおいしい話だろう。

 したがって経済学のイ・ロ・ハを働かせるためには、供給を競争的にさせることが不可欠なのだ。発送電分離が議論されている理由だろう。送電施設への投資は莫大で新規参入が難しい。送電と発電が別会社になれば、送電ほどコストがかからない発電分野に新親参入が増え、料金が下がるほうに圧力が働くのだ。太陽発電その他の再生エネルギーの研究促進にもなろう。

※週刊朝日 2012年8月10日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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