「伝説のディーラー」と呼ばれ、現在は投資助言会社「フジマキ・ジャパン」の代表を務める藤巻健史氏。過日報道された50歳時点での未婚率の高さ(男性の5人に1人、女性の10人に1人)に触れ、いまの政治が少子化問題にいい影響を与える側面があるかも?と問題提起をしている。

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 中国の一人っ子政策は別にして、歴史的に見ても世界的に見ても、国が貧しければ貧しい時ほど子供の数が多い。

 国が貧しければ社会保障を充実させる余裕がなく、親は老後を子供に頼るしかないから子供を多くつくる。社会保障が充実してくれば、老後は社会に頼ればよくなるから子供を産まない。

 あらゆるシステムは完全になればなるほど、逆に崩壊のリスクも出てくるものだ。社会保障が充実するほど出生率が落ち、社会保障費を賄う子供の数が減る。その結果、資金不足で手厚い社会保障制度が崩壊する。パラドックスである。

 日本も結婚未経験者の増加で、この道をたどるのか? いや、大丈夫だろう。こんなにバラマキを続けていればすぐにでも財政が破綻して、日本国はものすごい貧乏になる。だから子供の数が増える。社会保障制度が崩壊する前に少子化対策が功を奏するのだ。

 いまの政治は間違いだらけだと思うが、バラマキを続け、日本を貧乏な国にするという意味で、少子化対策だけは正しいことを行っているのだ。しかし、それではダメじゃん、である。

※週刊朝日 2012年6月29日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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