16日、政府は福井県おおい町にある関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を最終決定した。ニュースキャスターの辛坊治郎氏は、福井県の西川一誠知事が住民のリーダーではなく、国から送り込まれた地域の「支配者」として再稼働問題に態度を示していることに異論を唱える。

*  *  *

 関西広域連合の首長らは酷暑の夏を前に、大飯原発の限定的な再稼働に実質的にゴーサインを出した。

 私はいわゆる「脱原発」派だ。しかし関西に住んでいて、身の回りに現実に存在する「電力が止まると死ぬ」かもしれない人々の話や、明日にも倒産しそうな中小企業経営者の嘆きを聞いていると、停電だけは何としても避けなくてはいけないと思う。

 それにしても、なぜ福井県に原発が集中したのか? それは福井県が政府の「直轄領」だったからだ。戦後の福井県知事は、1人を除いて全員が中央官庁出身者だ。現在の西川知事も、旧自治省から副知事として送り込まれ、そのまま知事に就任している。

 日本初の商業用軽水炉は、1970年、福井県敦賀市に国策として建設された。以来40年余のほとんどの間、福井県知事は住民自治のリーダーではなく、国から送り込まれてきた地域の「支配者」として国策推進に当たってきたのだろう。そうでなければ、かねて何度もその危険性が指摘されている高速増殖炉の建設まで引き受けるはずがない。

 西川知事は「日本経済再生のためには原発が重要だ」と言う。しかし、自県の中心から遠く離れた隣府県との際に原発を次々造ってリスクを他の自治体に拡大し、経済的果実を独占し、さらに稼働するかしないかの判断について「消費地は『容認』する立場にない」と言い放つような態度は到底許されるものではない。

 福井県知事は、顔を洗って出直すべきだろう。

※週刊朝日 2012年6月29日号