警視庁組織犯罪対策5課と渋谷署は、5月14日までに福島県楢葉町の商工会長で、建設会社「渡辺興業」社長の渡辺征(ただし)容疑者(68)と長男で同社役員の啓容疑者(41)を、拳銃と実弾を所持していたとして、銃刀法違反容疑で逮捕した。
楢葉町は大部分が福島第一原発の警戒区域にある。渡辺容疑者はこの地で商工会長に加え、木戸川漁業協同組合長、町建設業協同組合代表理事、町復興計画検討委員会副委員長など数々の要職を務め、地元では"名士"で通っていた。
「週刊朝日」も取材で何度か本人に話を聞いたことがある。真っ白いスーツに、胸には「復興ならは」と書かれた赤いワッペンをつけ、一見、"その筋の人"と見間違うようないでたちだが、漁業組合では朝市や名物のサケをテーマにしたお祭りを実施し、地元の名物「すいとん」を売り出そうと「マミーすいとん音頭」と題したCDを作るなど、アイデアマンでもあった。
震災後は地元の復興に奔走していたが、環境省が進める放射能除染事業で、町役場周辺の工事を準大手ゼネコンが相場の10分の1ともいわれる激安価格で落札したことについては、
「法外な価格で、地元企業ではとうていできない」
と不満を漏らしていた。
後に、渡辺容疑者が代表理事を務める町建設業協同組合も除染事業を落札したが、このことが拳銃を持つきっかけになったのではないかと指摘する人もいる。
「参入を希望する会社は多い。大手ゼネコンを向こうに仕事を取った渡辺さんが、利権争いに巻き込まれていたという話もある。拳銃を所持しなければならないような理由があったのかもしれない」(建設業者)
※週刊朝日 2012年6月1日
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