大型連休明けから始まる消費税国会を前に、陸山会裁判で無罪判決を勝ち取った民主党の小沢一郎元代表(69)が、どの原発よりも早く「再稼働」した。秋の民主党代表選をにらみ、野田佳彦首相(54)と雌雄を決することになる。
 そうした大政局の渦中の5月下旬、永田町で物議を醸すこと確実な一冊の本が出版される。
『消費税国会の攻防 一九八七―八八 平野貞夫衆議院事務局日記』(千倉書房)。
 元参院議員の平野貞夫氏(76)が、衆院事務局委員部総務課長と委員部副部長時代に記した10冊の日記やメモから売上税・消費税関連部分を抜粋し、与野党の水面下の動きを白日のもとにさらす問題作だ。
 衆議院の職員時代から小沢氏や竹下登元首相の知恵袋として知られた平野氏は当時、与野党幹部たちと頻繁に会合を重ね、記者と情報交換して政局を精緻に分析、メモを作成して届けた。時には公明党に頼まれ、法案の基本構想まで練ったこともあった。本人も認めるとおり、完全に国会職員の職分を超えた動きだった。
 この"内幕本"がなぜ、消費税国会が紛糾するさなかに出版されるのか。
「1年前に出すはずだったが、作業が遅れてこの時期になった」
 平野氏はそう言って煙に巻くが、「策士」として鳴らした御仁だけに、額面通りには受け取れない。本には、野党対策に汗をかく小沢氏の奮闘ぶりが詳細に記されており、「強面(こわもて)から実務家にイメチェンを図る小沢氏への援護射撃」(永田町関係者)という、うがった見方さえすでに出ている。

※週刊朝日 2012年5月18日号