「房総沖に2活断層判明」「二つが南北に並走」「M(マグニチュード)9級、津波も」などと複数の全国紙やテレビが、未知の巨大活断層が見つかったと報じたのは、3月26日のことだった。

「房総半島、伊豆半島、小笠原諸島、湘南地域に大きな津波が襲うかもしれません」と強い口調で警告するのは、今回、「大活断層」の存在を発表したのは、東洋大社会学部の渡辺満久教授(変動地形学)だ。

 しかし、他の研究者に見解を聞くと、渡辺教授らの調査自体に対する異論も聞こえてきた。

 たとえば、地震学者のA教授。

「活断層と断定するには、もっと詳細な調査が必要です。海底地形を再現できたとしても根拠が弱い。これまでも、外見だけの判断で活断層と指摘されたが、その後の詳細な調査で覆ったケースがあります」

 別の大学の地震学者B教授はこう指摘する。

「地震は地中の奥深くで発生する。地形図からの推測で、あたかも大地震の発生源になるかのように発表するのは、国民の不安をあおるだけではないか」

 各紙の記事で「共同研究チーム」とされた海洋研究開発機構も、「データは提供しましたが、研究にはかかわっておりません」と、トーンが弱い。

 何だか雲行きが怪しいが、渡辺教授はそうした〝異論〟があることは認めた上でこう説明する。

「陸上の活断層は地形によって認定されています。海底でも同様にできるのです。確かに、他の大地震のように昔の記録もなく、この活断層でどんな地震が発生し、実際にどのような被害になるかは、現時点では分かりません。ただ、断層の長さから推測すると、一度にそれぞれの断層で地震が起きればM8以上になる可能性があります。断層は南北に走っているので、東西方向に大きな津波が発生すると考えられるのです」

 そしてこう力説する。

「重要なのは、ここは大きな活断層はないと考えられてきた地震の『空白域』だったということです。福島沖のプレート境界だって、大地震は起こらないとずっといわれていたのに、東日本大震災が起きてしまった。ほったらかしにしておいて、本当に大地震が来てからでは遅い。とはいえ、われわれ地形学者が今できるのはここまで。海底調査が可能な研究者の方々にはボーリング調査をして、過去にいつ地震が発生したのか、今後、どのような被害を生む恐れがあるのかを調べてほしいのです」

※週刊朝日 2012年4月13日号