2010年4月より現職に就く、入戸野修・福島大学学長。震災以来、被災者に対して多くの支援を続けている同大学だが、今年は受験者が増加したという。入戸野学長が語る。

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 厳しい状況へ挑戦する学生にエールを送る意味を込め、本年度の授業料の全額免除と被災者の入学料、授業料免除を決めました。ですが、受験生の増加は予想していませんでした。被災地の大学として、ボランティアなど現場で学べることがたくさんある。そんな環境だからこそ、実践力のある人材が育つのです。

「学ぶ」姿勢にも、震災前にはなかったことが起こっています。福島大は今後、研究面で世界最大の関心事を扱うことになりました。復興支援を目的に昨年立ち上げた「うつくしまふくしま未来支援センター」のほか、再生可能エネルギーに関するカリキュラムの発足も準備中です。多様性のある福島大で、学生には、自分の進むべき道を見いだしていってほしいと考えています。

 リスクと共存して歴史を生き延びてきた人間にとって、震災と原発事故は決して「想定外」ではなかった。失敗は失敗として認めなくてはならない。抱えるリスクを乗り越えていくために、我々がこの大きな失敗を生かさなければ未来はないのです。

※週刊朝日 2012年3月30日号