「福島大学原発災害支援フォーラム(FGF)」メンバーであり、福島日独協会理事の森良次・福島大学経済経営学類准教授は、ドイツでの短期ホームステイの斡旋をしている。震災からこれまでに20人が実際にドイツを訪れた。森准教授によると、ホームステイをした学生が放射能問題について正面から考えるようになったという。

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 ホームステイをした学生によると、受け入れ先の家庭で、「福島は危ないんじゃないか?」「何で福島の人たちは逃げないんだ?」といったことを延々と議論させられたとのことです。また、ホストファミリーに州首相の官邸まで連れていかれ、「福島の現状について」という大きなテーマで発表を求められた学生もいます。日本に戻った彼らが口を揃えて言うのは、「ドイツでは一人ひとりが社会問題に対して、うるさいくらいに自己主張しているという事実に驚いた」ということです。私が彼らに気づいてほしかったのも、まさに「社会問題に対して、個々人が何らかの姿勢を持たないといけない」ということでした。

 震災当初から「何かしなきゃ」という学生は大勢いました。「福島が有名になってしまったことをあえて利用できないか」としたたかに考える学生もいました。しかしその半面、放射能の影響や国の原子力政策に対しては思考停止している(せざるをえない)ように私にはみえました。実際、ある学生は私に「放射能の問題を考えると気が狂いそうになるから考えたくない」と話していました。その学生もホームステイを経験し、放射能問題についても正面から考えてくれるようになりました。

 企業も国も、そして私も、誰もあなたたちのことを守ってはくれません。個人であることを自覚して、今なお進行している福島の事態について考え、そこから学び、自分で自分を守らなければなりません。

※週刊朝日 2012年3月9日号