◆政治主導 政治家が責任取る体制づくりが必要

 そもそも、「政治主導」とは何なのか。小沢氏の言葉を借りれば、

「官僚任せでない、政治家が自ら責任を持って決断し、自らの責任で実行する、そういう政治・行政」(10年9月1日の共同会見)

 ということになる。ポイントは「自らの責任で実行する」という部分だ。

 小沢氏は、政治主導を実現するには政治家にそれだけのリーダーシップと責任感が必要だと説いている。

「僕は官僚無用論を言っているわけではありません。官僚は優秀ですし、必要です。ただ、政治家が、官僚を自分の理想や政策を実現するためのスタッフとして使えるだけの見識とビジョンを持たないとダメです。『僕が責任を取る。我が党としては、これが最優先だ。これにカネを付けろ』とちゃんと言えば、官僚は従いますよ」(「週刊朝日」1月7・14日号)

 この「政治主導」は、政治家・小沢一郎の原点ともいうべき理念だ。42年前の1969年に27歳で衆議院選挙に初めて立候補した際の選挙公報に、小沢氏はこうつづっている。

 《このままでは日本の行く末は暗澹たるものになる。こうした弊害をなくすため、まず官僚政治を打破し、政策決定を政治家の手に取り戻さなければならない》

 昨年9月14日の代表選でも、小沢氏は投票直前の決意表明でこの一文を読み上げ、さらにこう続けた。

「若かりしころの、感じたその思いは初当選以来、いまなお変わっておりません」

「官僚依存の政治に逆戻りさせるわけにはいきません。それはとりもなおさず、政治の歴史を20世紀に後戻りさせることになるからであります」

 菅政権は財務省をはじめとする霞が関に取り込まれたかのように見える。小沢流の「政治主導」は依然、確立されていない。

 

 ◆日米同盟・普天間 米軍撤退の流れで基地問題解決も

 鳩山政権崩壊のきっかけの一つとなった米軍普天間基地移設問題。菅首相は昨年12月17日に沖縄で仲井真弘多県知事と会談し、

「普天間の危険性除去を考えた時、辺野古はベストの選択ではないかもしれないが、実現可能性を含めてベターの選択ではないか」

 と理解を求めたが、仲井真氏は取り付く島もなく、

「ベストでなくてベターだというのは勘違い。県内(移設)はすべてバッド」

と記者団に語った。

 一方、小沢氏は昨年9月2日の代表選の公開討論会でこう主張している。

「日本とアメリカの国同士の約束は尊重しなければならないと思っております。ただ、沖縄の県民の皆さんがどうしても反対だとなりますと、現実に進まない。沖縄の皆さんとも話さなくてはいけないし、またアメリカ政府とも話さなくてはいけないし、その中で両方が納得できるいい知恵が出るように努力することは、決して悪いとは思いません」

 小沢氏は、そもそも米軍は沖縄から撤退しようとしていると指摘する。

「米国としても、兵器や軍事技術が発達し、前線に大きな兵力を配置しておく必要はないと考えている。だからこそ、海兵隊をグアムへ移転させるのでしょう」(「週刊朝日」10年9月17日号)

 たしかに、ドイツや韓国ではすでに米軍撤退と基地縮小が進んでいる。

 年明け早々に来日したゲーツ米国防長官は、1月13日に北沢俊美防衛相と会談し、共同記者会見で同盟の重要性を語った。

「この1年間、普天間のことばかりが言われてきたが、日米同盟はより深く、より豊かなものだ」

 だが、小沢氏は昨年12月23日の動画配信サイト「ユーストリーム」で、こうぶちまけていた。

「僕は日米同盟なんて、同盟関係じゃないと思ってる。同盟っていうのは対等な国と国との関係であって、日米同盟なんて存在しない」

 ゲーツ長官は、2005年に策定した「共通戦略目標」を日米両政府が見直す際に、普天間問題を切り離す方針も明言した。しかし、と小沢氏は言う。

「アメリカは、ほんとうに自分の利益に合致しなかったら、血を流してまで日本を守る気はないです。だからその意味で、僕はもっときちんと自立した日本人と日本にならなくてはいけないと主張している。アメリカは最大の同盟国であって、日本にとって最も大事な国であることは間違いない。ただ、だからといってアメリカに尾っぽを振っているだけでよいわけではない」(「週刊ポスト」1月14・21日号)

 日米間に横たわる本質的な問題は、今のままでは解決できないというのが年来の主張だ。

◆日中関係 大事な隣国でも言うべき事は言う

 日米関係と並んで重要なのが日中関係だ。

 小沢氏は日米中の関係は「正三角形であるべき」だと考えてきた。

「政治・経済システムが基本的に一緒の日米関係が、非常に緊密で大事な関係であるのは間違いありません。ただ、中国は隣国で、文化的にも長年影響を受けた国だし、大国ですから、同じように大事な関係だと僕は言ってるんですよ」(「週刊朝日」10年9月17日号)

 その中国と、昨年9月の尖閣諸島沖衝突事件で大もめにもめたのは、ご存じのとおりだ。政府が中国人船長を釈放したことに、与党内からも猛烈な反発が出た。

 小沢氏は、一連の対応について、

 「事実として領海侵犯、公務執行妨害があったのならば、法に照らして厳然と処理する。まあ、僕だったら、まず釈放はしません」(「週刊朝日」1月7・14日号)

「親中派」と目される小沢氏だが、強気の姿勢は一貫している。

「中国の首脳と会談したときにハッキリ言ってます。『何千年の歴史の中でも、中国の政権の支配下に入ったことはない。日本領土であることは間違いない』と。僕の正論、筋論に対して、中国はおかしな反論はしなかったですよ」(「ニコニコ生放送」10年11月3日)

 その一方で、今の中国の問題点をこう指摘する。

「中国の今の政権はかなり軍部の力が強くなってるように私は感じます。中国は『覇権主義はとらないよ』と自分で言ってるんですから、一定のけじめある態度をとらないといけないと思います」(朝日ニュースター「ニュースの深層」1月11日)

 他方、日本自身の問題点も明確に意識している。

「中国でも欧米でも、自己主張のない人間は軽蔑されます。逆に信頼を損ねることになる。歴代首相と一緒に外遊に行ったとき、世界観や哲学を問われて答えられる首相は、僕の知っている限りいなかった。だから、いけないんです」(「週刊朝日」1月7・14日号)

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