みなさん、サマータイムはご存知でしょうか?今年もフランスではサマータイムが始まりました。サマータイムとは、日照時間が長くなる時期に、時計を標準時より一定時間(おもに1時間)進める制度のことです。
今回は、サマータイムが導入された経緯や目的、制度にまつわる議論についてお伝えします。

何のためにサマータイムがあるの?

サマータイムを導入する一番の目的は、節電や省エネです。電気ではなく自然光を生かした生活をするために、日の出が早く日の入りが遅くなる時期に、生活時間を一時間早めます。その分、電力の消費を減らすことができるというわけです。
また、日没までの時間が長くなるので、活動時間が増えることによる経済効果も期待できます。夜になってもいつまでも明るいので、レストランやカフェのテラス席でゆっくり会話をしながら食事ができるのは、この時期ならではの楽しみです。仕事の後の時間を充実させることができるのも、サマータイムを実施する理由の一つのようです。

サマータイムが導入されたきっかけは、第一次世界大戦と言われています。
当時のドイツやイギリスなどで、国内の電力需要を減らすことを目的に実施されたのが始まりだそうです。その後、アメリカでも第二次世界大戦をきっかけに定着し、今にいたります。
現在、サマータイムが行われているのは、ヨーロッパや北米、オセアニアなどの高緯度の国(北半球)が中心です。これらの国は春から夏にかけてどんどん日が長くなり、ここフランスでも夏の夜は21時半になっても明るいほどです。このとにかく長い日照時間を有効に活用したいという考えは納得できますね。

夏だけじゃない!サマータイムは春から秋にかけて

サマータイムという呼び名から夏だけの制度だと思われがちですが、実施される時期は、おもに3月から10月です。
フランスを含むEUでは、サマータイムの期間は3月の最終日曜日から10月の最終日曜日までです。2023年の場合は、3月26日(日曜日)の深夜2時に始まり、10月29日(日曜日)の深夜2時に終わることになります。フランスと日本との時差は8時間ですが、サマータイムの間だけは1時間短くなって7時間になります。わずかですが、日本に住む家族や友人と連絡がとりやすくなるのがうれしいですね。
ちなみにアメリカの場合は、3月の第2日曜日から11月の第1日曜日までの間がサマータイムとなるそうです。
国によって少しずつ期間がずれますが、この頃に海外へ旅行や留学などに行かれる場合には、事前に調べておくと安心です。

サマータイムが廃止される?

実は、サマータイムには反対意見が多く、廃止に向けた話し合いが進んでいることをご存知でしょうか?
節電のために始まったサマータイム制度ですが、今ではその効果はあまりないと言われています。制度が導入された第一次世界大戦時は、一般家庭に普及している電化製品はおもに照明でした。しかし今は、各家庭に冷蔵庫やパソコンなど様々な家電がいくつもあり、照明を消した程度では、高い省エネ効果は期待できないそうです。時代の変化とともに節電効果が薄れてしまったんですね。
また、サマータイムによる健康被害も問題視されていて、体内時計が狂うことで体調不良を起こしたり、睡眠不足による交通事故が増加したりと、悪影響が大きいとも言われているのです。さらには、年に2回の時間変更の度に、システム変更にともなう手間とコストがかかり、無駄だという意見もあります。
このような理由から、2018年7月、EU全域で実施されたオンライン調査では、なんと回答者の84%がサマータイム制度の廃止に賛成しました。これを受けて、2019年3月、EUの欧州議会では、2021年を最後にサマータイム制度を廃止する法案が可決されたのです。
廃止された後は、夏時間か冬時間(通常の時間)か、どちらを採用するかはEU加盟国の代表と話し合いをして決めることになりました。しかしここ数年、コロナ禍の影響もあって議論が進んでいなかったようで、2023年4月現時点で、EU加盟国の意見はまとまっていません。私もフランスに来て間もない頃は、初めてのサマータイムで時間が変わることにワクワクしていました。しかし今では、朝時計を見てひとまずびっくりし、その後家にあるあらゆる時計の時間を変え、わずかですが体内時計のズレを感じながら過ごす一日を少し面倒に感じてしまうこともあります。
そろそろ議論が再開され、着地点を見出せるのでしょうか?歴史あるサマータイムがついに廃止されるのか、今後の展開に要注目です!