もうすぐ立夏。春の名残から初夏に向けて季節が動き出しています。立春から数えて「八十八夜」の5月1〜3日頃を過ぎると、農家では田植えや茶摘みが盛んにおこなわれます。この時期につまれる新芽のお茶は新茶として古来、親しまれてきました。豊かな香り、色、風味が楽しみですね。春の新緑も少しずつ濃くなってくる爽やかな季節です。

五月は五月晴れというイメージが強いですが、実は雨も多い月。梅雨の走りがやってきて、月の後半は全国的に雨になりやすいと言われています。「五月雨を集めて早し最上川」という芭蕉の有名な句の季語の「五月雨」は旧暦5月に降る雨、つまり梅雨のこと。そして、「五月晴」は、実は梅雨の合間の晴れ間のことです。そんな梅雨の時期の来る前に収穫されるじゃがいも。ワインによし、日本酒によし、焼酎によし、そのまま食べてよしですね。

5月は、引き続き春の旬が楽しめるとともに、初夏の旬の食べ物もでてくる味わい豊かな季節。本日は、たくさんある5月の旬の中でも、美味しくて、ひときわ私たちの元気や健康を助けてくれるそんな旬の食材に注目していきます。

〇〇に勝つ!?「鰹(かつお)」~ビタミンB群やDを補おう~

海産物では、わかめに続き、「生もずく」が美味しい時期です。春のしらす、ほたるいかも、もう少し楽しめそうですが、これから美味しい「サザエ」「あじ」「いさき」「めばる」「あおりいか」「ウニ」など続々登場。そして、「鰹」の美味しい季節もやってきました。

急に暑くなるこの時期は、病にかかりやすく、亡くなる人も多かったそうです。古来、5月を『毒月』と呼び、厄除け・毒除けをする意味で菖蒲やヨモギ・ガジュマロの葉を門に刺し、蘭を入れた湯に入ったり、菖蒲を浸した薬用酒や肉粽を飲食して健康増進を祈願しました。端午の節句の「端午」は、もとは月の端(はじめ)の午(うま)の日という意味。午(ご)と五(ご)の音が同じなので、毎月5日を指すようになり、いつしか5月5日のことになったと言われています。邪気を退治する意味での儀式として五月五日の端午の節句に「鯉の吹流し」を立て、「武者人形(五月人形)」を 飾って男の子の前途を祝うようになったのは、徳川時代からだそうです。邪気を払う菖蒲と「尚武」をかけて、武家の男子の出世を祈願しました。

現代も、端午の節句のゲン担ぎで、ブリやスズキといった出世魚や「勝男」とかけた「鰹」を食します。

鰹は、たんぱく質の含有量が高く、ビタミンB群、Dも含み、元気のでる魚として好まれます。肉が柔らかく、鮮度が急に落ちるため、鎌倉時代までは、乾燥させて堅いものを食したため、「堅魚」とよばれ、この音がなまって「かつお」、漢字も「堅」という字が入り「鰹」になりました。

黒潮にのって、5~6月に伊豆、房総沖に北上し、秋には、脂がのって東北方面から南下します。鰹のたたきには、さっぱりとした味わいや食感が好まれるので、4月下旬から5月中旬にかけてとれる初鰹を何よりも真っ先に、大金を投じて惜しまぬ江戸っ子が多かったのもわかりますね。

皮付きのまま火であぶって氷水で冷やしていただきます。現代では、すでにあぶられた「たたき」が売られていますね!

ここでは鰹のたたき、3つの食べ方をご紹介します。

【1】ベーシック

合わせておいた酢と塩を、刷毛で鰹にぬりラップに包み、食べる直前まで冷蔵庫にいれます。厚目のさしみのように切り、小口のあさつきとおろししょうがをたっぷりかけていただきます。

<材料>

酢 大匙1

塩 小さじ1

あさつき 1束

ショウガ ひとかけ

【2】土佐風

食べる直前まで冷蔵庫にいれていた鰹を切って器に盛り、キュウリの短冊切り、にんにくの薄切り、青じその千切り、あさつきの小口切りをちらし、たっぷりの合わせ酢をかけます。

にんにくの苦手な方は、カイワレ、ショウガに変えてもよいですね。

<材料>

きゅうり 2本

にんにく 2片

青じそ  適量

あさつき 一束

(合わせ酢)

柚子酢 大匙5

米酢  大匙4

醤油  大匙3

【3】おろし和え

合わせ酢と大根おろしで、さっぱりと、思わずたくさんいただいてしまいます。

<材料>

大根おろし 1/2本

にんにく  2片

しょうが  大1片

(合わせ酢)

酢    大匙1

しょうゆ 大匙1と1/2

みりん  適宜

生鰹やたたきも美味ですが、なまり節もサラダや酢の物に便利
生鰹やたたきも美味ですが、なまり節もサラダや酢の物に便利

古代文明時代からの注目されてきたニンニク~ビタミンB6やビタミンB1誘導体を補おう~

5月から徐々に流通量が増えていき乾燥していない生にんにくが楽しめます。この季節の鰹や肉料理、野菜料理にもニンニクは欠かせないですね!

世界各国の料理に使用されるニンニク、ガーリック。和名では「ひる:蒜」と呼ばれ、食せば怒りや性欲が湧きやすく、仏教や道教の教えに支障があるとして、伝来当初はあまり普及しませんでした。ニンニクの良い効果が認められていったのは江戸時代、そして明治時代に洋風の食文化とともに食卓にも普及していったと言われています。

疲労回復や滋養強壮に効果があると言われていますが、その働きは今や、科学的に解明されつつあります。特に、炭水化物(糖質)をエネルギーに変えるために絶対不可欠な「ビタミンB1」の働きに大きく関係することで知られています。

武田薬品工業株式会社の「アリナミン」は、にんにくのビタミンB1誘導体を商品名にしたものです。

近年「生にんにく」より、低温で熟成した「黒にんにく」や「琥珀にんにく」に多く含まれることで話題となっている「S-アリルシステイン」は抗酸化作用があり、免疫機能を高めるのではと研究されているそうです。

黒にんにくや琥珀にんにくは、フルーティーで味もよく、健康の維持のために人気です。にんにくの匂いがついてしまうので、旧い炊飯器など保温できる機械があれば、自宅で簡単に手作りできるそう。様々なサイトで作り方が紹介されていますのでチェックしてみてください。

香り高いメロン~GABAを補おう~

5月から8月にかけて、メロンの旬です。一株で一個しか実をつけないのが基本ですので高級な値段になっています。もともとバナナと並びカリウムを多く含有し、体内の塩分濃度を調節してくれます。近年メロンは、トマトや玄米よりも、GABAが多く含まれる食品として、注目されています。

昨年、静岡県立大学食品環境研究センターが科学的根拠を示す研究レビューや届出書類を作成し、メロンに関する機能性表示食品の届出が消費者庁に受理されました。メロンについて、ストレス緩和作用のある機能性成分「GABA(ギャバ)」に関する届出が受理されたのは、全国で初めてのことでした。

(参照:https://www.u-shizuoka-ken.ac.jp/news/melon1906/)

本来なら体内で適正量が作られるGABAですが、ストレスや加齢により体内のGABAの量が減る傾向があるとされていますので、みずみずしく良い香りのするメロンをいただくことで、補えるなら一石二鳥ですね。

丸ごと購入した場合は常温で保存します。香りが感じられ、底を軽く押してやわらかいようであれば食べごろです。

カットしたものは種をとってから冷蔵庫で保存します。甘みの少ないものは、ブランデーやウイスキーなどの洋酒と砂糖で味付けするのもおいしく召し上がれます。

赤肉のメロン 種類によって出回る季節が少しずつ異なります
赤肉のメロン 種類によって出回る季節が少しずつ異なります

長芋(やまいも)、かぶ、しいたけ、きくらげ、ふき、こごみ、ぜんまい、たらのめ、たけのこの春の旬をまだ楽しんでいない方、まだ間に合います!ゆるふわの春キャベツも引き続き楽しめます。「アスパラ」「ルッコラ((ロケットサラダ)」「レタス」「さやえんどう」「そらまめ」「クレソン」など、サラダに合うお野菜たちも続々登場。「山椒」「明日葉」「らっきょう」も初夏の旬です。連休のおうち時間を使ってどんなメニューを楽しむか悩ましいですね。

食卓に旬な食材があると、心も体もうれしいですね。健やかによい5月をお過ごしください。

【参照】

旬の食材百科

旬の食材カレンダー(にんにくの旬)

毎日のお惣菜シリーズ「魚料理」婦人之友社

「くらしのこよみ」平凡社

あさりの酒蒸し まだまだ、あさりもおいしい季節です
あさりの酒蒸し まだまだ、あさりもおいしい季節です