宇宙から世界中の雨を予測する技術とは? 〈tenki.jp〉|AERA dot. (アエラドット)

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宇宙から世界中の雨を予測する技術とは?

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2019年台風2号:ひまわり8号による雲(左)とGSMaPによる雨(右)のようす(2019年2月24日9時)

2019年台風2号:ひまわり8号による雲(左)とGSMaPによる雨(右)のようす(2019年2月24日9時)

世界の雨量計の分布(JAXA/EORC, 「GPM Website」より)

世界の雨量計の分布(JAXA/EORC, 「GPM Website」より)

世界の気象レーダーの分布(WMO,「WMO Radar Database」より)

世界の気象レーダーの分布(WMO,「WMO Radar Database」より)

GSMaPによる世界の雨のようす(2019年4月8日8時観測)

GSMaPによる世界の雨のようす(2019年4月8日8時観測)

天気予報(数値予報)のイメージ(気象庁,「こんにちは!気象庁です!平成30年2月号」より)

天気予報(数値予報)のイメージ(気象庁,「こんにちは!気象庁です!平成30年2月号」より)

ひまわり8号による台風2号の雲のようす(2019年2月24日9時観測)

ひまわり8号による台風2号の雲のようす(2019年2月24日9時観測)

2019年台風2号の進路と強さの予想図(2019年2月24日9時発表)

2019年台風2号の進路と強さの予想図(2019年2月24日9時発表)

日本の気象レーダーによる雨の観測(2019年2月24日9時観測)※グレーの領域はおおよその観測範囲外

日本の気象レーダーによる雨の観測(2019年2月24日9時観測)※グレーの領域はおおよその観測範囲外

GSMaPによる3時間後の雨雲の予想(2019年2月24日9時発表)

GSMaPによる3時間後の雨雲の予想(2019年2月24日9時発表)

近年、気象庁による地上の雨量計や気象レーダーに加えて、JAXAによる宇宙から気象衛星を使った雨の観測が行われています。この技術により、地球全体で雨の観測・予測ができるようになりました。
日本から遠く離れた熱帯で発生した台風の雨のようすも、ほぼリアルタイムで確認することができるようになった上、天気予報そのものの精度も向上させるこの技術について、詳しくご紹介します!

なぜ、宇宙から雨を観測するの?

天気予報において、雨を正確に観測することはとても重要です。
雨の観測においては、
①地上に設置した雨量計による観測(AMeDAS)
②地上に設置した気象レーダーによる観測
が一般的です。
①は「点」、②「面」を対象にしており、両者でデータを補うことで、より精度良く降水量を測ることができます。しかし、いずれも地上に設置するため、観測範囲に限界があり、海域までをカバーすることはできません。また、欧米や日本・韓国などでは比較的雨量計や気象レーダーが密集して分布していますが、アジア、アフリカ、南米では、まだそれほど整備が進んでいません。
雨量計や気象レーダーによる観測では、地表面の25%程度しかカバーできていないのが現状です。(JAXA/EORC, 「GPM Website」より) それならば、地上の観測網では観測できない地域のデータを補完するために「地球全体の雨が降るようすを宇宙から捉えよう!」ということで、近年、気象衛星が活用されています。 複数の気象衛星の情報を組み合わせることで、ほぼ全球の雨のようすを観測(推定)することができます。
これが、宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)が取り組む、全球降水観測計画(以下、GPM計画)における「衛星全球降水マップ(以下、GSMaP)」の技術です。

宇宙飛行士や探査機だけではない、JAXAの技術

「JAXA」と聞くと、今まさにミッション遂行中の小惑星探査機「はやぶさ2」や、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の開発および宇宙飛行士による科学実験など、宇宙探査や宇宙開発といったイメージが強いかもしれません。
その他にも、航空技術の研究や宇宙輸送システム(ロケットなど)の開発、そして人工衛星による地球のモニタリングなど、多岐にわたるプロジェクトを行っており、今回ご紹介するGSMaPのデータも、GPM主衛星や水循環変動観測衛星「しずく」などの複数の人工衛星を用いたプロジェクトの成果の一つです。
雨量計や気象レーダが”地上”から雨を観測しているのに対し、気象衛星を使って”宇宙”から観測するのがこのGSMaPなわけですが、単に上空から測ったデータをそのまま使っているわけではありません。
複数の放射計を使用して観測を行い、それらを複雑なアルゴリズムを用いて計算し、”最良の降水観測データを推定”しています。こうした技術の開発も、JAXAが中心となって行っています。
と、ここまで雨の観測技術やGSMaPについていろいろとお話してきましたが、あまりにもスケールが大きすぎる話で、いまいちピンとこないかもしれません。
ここからは、このGSMaPのデータが、日本の天気予報にどんな効果をもたらしてくれるのかを見ていきましょう!

GSMaPのデータで日本の天気予報の精度があがる!?

GSMaPのデータにより、これまで雨量計や気象レーダの観測範囲内でしか把握できなかった雨のデータが把握できるようになりました。
これらGSMaPのデータは、地球温暖化や気候変動などのグローバル研究や、地上の観測網が不足している途上国における洪水予報や河川管理などに利用されることはもちろんのこと、天気予報の計算などにも利用されます。
天気予報の計算において、得られる雨のデータが増えると、日本の天気予報の精度も上がります。
なぜかというと、天気予報は、観測データをもとに、それらが予測時間後どのように変化するかを、さまざまな物理過程の方程式にあてはめて計算して作られています。つまり、計算式にあてはめる観測データがなかったり、観測データの精度が悪いと、正確な計算ができなくなってしまうのです。それゆえ、観測データの有無や精度が大変重要になってくる、というわけです。
こうした理由から、近年、日本の気象庁では、予測精度向上のため天気予報の数値計算において、GPM主衛星や水循環変動観測衛星「しずく」などのデータの利用をはじめています。

台風の発生・発達期から雨の予想が可能に!

さらに、GSMaPの雨の観測データは、日本の天気予報の精度を向上させるだけではなく、遠く離れた場所の雨の予測も可能にしました。
今年の2月に発生し、2月としてははじめて猛烈な勢力に達した台風2号を例に見ていきましょう。この技術ができる前は、日本からはるか遠くにある台風については、進路や強さ(中心付近の風速)は予測できても、雨の強さや範囲までは予測できませんでした。
今回、熱帯付近の雨の観測・予測ができるようになったことにより、熱帯の海上で発生し、北上して日本に影響をもたらす「台風」について、日本に接近する前の台風発生・発達期における雨のようすを観測・予測できるようになったのです。こちらは、日本の気象レーダーによる「雨雲の動き」の観測データです。グレーの領域は”地上に設置した気象レーダーの観測範囲外”を表しており、従来、台風の降水域が観測範囲内に入らないと、これまで雨のようすを把握することができませんでした。そしてこちらが、GSMaPによる、東アジア~オセアニアにかけた3時間後の雨の予想です。
台風の強さは中心付近の風速で決まるため、雨の強さと完全に一致するわけではありませんが、この時台風2号は、台風の強さのレベルで最も強い「猛烈な台風(最大風速54m/s以上)」に達していました。
GSMaPの予測情報では、日本の南の太平洋上には、はっきりと台風の雲に該当する、強い雨の領域が予想されていました。
日本に影響をもたらす恐れのある台風の雨のようすを、低緯度地域における発生・発達期から長期的に、しかもほぼリアルタイムでモニタリングできるようになったことは、とても画期的なことです。

GSMaPの観測・予測データの確認方法

平成の時代は、驚くほどの早さでインターネットが普及し、気軽にグローバルな情報が得られるようになった時代でした。同様に、天気予報のグローバル化も、この数十年で大幅に進んでいます。
tenki.jpでは、GSMaPの観測・予測データを「tenki.jp×JAXA 世界の雨雲の動き」のページで公開しています。ぜひ、きょうの地球のようすをチェックしてみてください。
「tenki.jp×JAXA 世界の雨雲の動き」
URL:https://tenki.jp/jaxa/
情報提供エリア:東アジア、南・東南アジア、太平洋(ハワイ付近)、オセアニア
更新間隔:30分
予測対象時間:実況から3時間先まで1時間ごと<参考>
GPM Website(JAXA/EORC) https://www.eorc.jaxa.jp/GPM/index.html
WMO Radar Database(WMO) http://wrd.mgm.gov.tr/default.aspx?l=en
気象庁HP「こんにちは!気象庁です!」(気象庁) https://www.jma.go.jp/jma/kishou/jma-magazine/


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