二十四節気、処暑の末候「禾乃登(こくものすなわちみのる)」は稲が稔る時期です。青々と生えそろっていた田んぼの稲穂にも実がはいり、次第に重く垂れ下がり始めます。「稔るほど頭を垂れる稲穂かな」の教訓が思い出されます。収穫までもう一歩。おごることなく努力をつづけましょう、そんなふうに背中を押してくれているのかもしれません。今月に入りカレンダーや手帳の残りが少なくなり始めたのを感じた方も多いことでしょう。9月は始まりの時でもあります。実りの時は目標の成果が現れる時、今までの反省から新たな挑戦を決意する時、等々暑さがおさまるこの季節だからこそ勇気も湧いてきそうです。

みんなが初めて経験する夏を乗り越えて迎える秋の喜び

今年の夏は早く明けた梅雨に続いて到来! 30℃を越える真夏日、35℃を越える猛暑日も全国各地で観測され、日本中が暑さに悲鳴をあげました。私たちが知っていた夏は昼間の炎天をなんとかしのげば、夕立がサッと降り注ぎ暑さを収めてくれるそんなものでした。近年の気候変動は季節のありようを少しずつ変えているようです。今までにない暑さとともに、局地的な大雨は予想もしなかった大きな被害を各地にもたらしました。80歳を越す方々が「こんなことは初めてだ」と口にされ、茫然とされていた姿に心がいたんだ方も多いと思います。都心でも鋭く光る稲光の明るさの中に雷鳴が轟き、街ごと洗い流されそうな雨を経験しました。浸水によって帰り道を阻まれた方も多かったことでしょう。
太陽の光と天の恵みである雨によって作物が育つことを私たちは知っています。陽差しも雨も足りなくては困るし、多すぎても困るのだということを身に染みて感じたのが今年の夏のような気がします。お米や果物など作物に実が入る時期をむかえる今、たっぷりとした収穫が望める秋の気候になって欲しい、そう願わずにはいられません。

秋は何色?あなたにとって秋は何色ですか、そして昔は?

まだまだ暑い日はあるようですが、朝晩はしのぎやすい時間を感じられるようになりました。秋になると木々は力強い緑から黄色へ、赤へと色を変えていきます。ファッションを扱うお店では9月の声をきくと、青や緑や赤も鮮やかさをおさえた落ち着いた秋色の雰囲気になっていきます。
昔の人は秋をどんな色に喩えたのでしょうか? 万物は木火土金水の5元素で作られている、とする五行説では「金」があてられています。金色、稲の穂並みを思い浮かべると「なるほど」と納得してしまいます。もうひとつ秋には「白」があてられ「白秋」といいます。私たちには「北原白秋」としておなじみですね。口ずさんだ覚えがありませんか?「♪この道はいつかきた道」や「♪赤い鳥、小鳥」の歌の作詞を多く手がけた詩人です。日本の情景をだれもが心に思い描ける、そんな詩がたくさんあります。
とんぼの目玉はでっかいな、
地球儀の目玉、
せわしな目玉、
目玉の中に、
小人が住んで、
千も万も住んで、
てんでんに眼鏡で、あっちこっちのぞく、
(続)
「とんぼの目玉」という詩です。北原白秋は福岡県柳川で豊かな自然と愛情の中に育ちました。子供のするどい観察の眼とユーモラスな詩人の想像力を感じる詩です。トンボの飛びかう秋空は日本の原風景のひとつと言えるかもしれません。トンボの昔のいい方は「秋津」そして『古事記』『日本書紀』には日本の国を「秋津州(あきつしま)」と記しています。秋に大空を飛びかうトンボは豊かな稔りの季節をあらわす昆虫として、私たちの生活の中にとけこんでいます。今年もトンボを見つけて秋を感じたいですね。
参考:
『とんぼの眼玉』わくわく!名作童話館2 東京図書センター

お米のおいしさをたっぷりと楽しんでいますか?

毎日口にするごはんの美味しさは言うまでもありません。お酒のうまさに魅了されている方も多いでしょう。子供たちはもちろん私たちのおやつにもお米はたくさん使われています。団子やお、せんべいだけではありません。お米をポンと弾けさせて甘い蜜をからめた「おこし」を知っていますか? 歯にくっついて困ることもありますが、さくさくとして甘くそれでいて軽い「おこし」は小腹の空いた時、ちょっと甘いものが欲しい時に嬉しいお菓子です。浅草みやげで有名ですが、大阪にもありました。大阪のはちょっと堅めのしっかりした「おこし」です。素朴なお菓子の「おこし」ですが、材料や作り方に工夫をこらし硬さや味のバラエティも幅広くなっていて、甘党辛党どんな人も楽しめるようになっているようですよ。いつ食べても美味しいと感じられるのはやはりお米のお陰でしょうか。どこかで「おこし」を見つけたらぜひ味わってみてください。食欲の秋ですから。