7月に入りましたね。天気予報でも「夏日」の単語を聞く日が多くなりました。7月8日は二十四節季の「小暑」。一年で最も暑い日とされる7月23日の「大暑」まで徐々に暑くなってくる15日間を指しますが、別の意味では、暑中見舞いの開始や、お中元を贈るなどの目安とされている節季だそうです。ところで、暑いに「小」または「大」がつくだけで、なんとなく暑さの程度を想像できたりしませんか?
そこで今回は、なぜ漢字を見ただけで場面が浮かぶのか、言葉で「暑さ」をどれだけ表現できるのか、を調べてみました。

見ただけで「暑さ」を感じる理由とは?

なぜ文字を見ただけで場面が想像できるのでしょうか? それは「視空間認知」という脳の機能が関係しているといわれています。視空間認知とは、目から入った視覚の情報を処理し、空間の全体的なイメージをつかむための機能のこと。
例えば「3本の縦線」を見ると「川」、「木が2つ」で「林」など、実際の視力とは関係なく、発達と経験から身についていく機能であり、図形や地図を読める力なども同様なのだそうです※。
ということは、暑くなってきたな~という体験をしたから「小暑」が想像でき、「大暑」にいたっては、どろどろの汗をかく体験したからこそわかる感覚ということになりますね。視空間認知機能は、複雑で未知の部分も多いそうですが、人間の脳が多くの可能性を秘めている証といえるのではないでしょうか。
※参照:LITARICO発達ナビ

「暑さ」を例える季語あれこれ

季語には「暑さ」を表す言葉が多くあります。なかでも代表的なものをご紹介します。
レベル1・「炎昼」(えんちゅう)
真夏の焼けつくような昼のこと。一日でもっとも暑い時間帯をいう。アスファルトからの照り返しが厳しい様子がうかがえる。
レベル2・「極暑」(ごくしょ)
一年でもっとも暑い時をいう。暑さの極み。「大暑」より少し遅い7月下旬から8月初旬ころ。各地の最高気温が記録されることが多い。
レベル3・「炎暑」(えんしょ)
真夏の燃えるような暑さ。ぎらぎらと照りつける太陽のまぶしさが浮かぶ。
レベル4・「酷暑」(こくしょ)
気温の上昇と高い湿度が加わった、きわめて不快な暑さ。熱中症などが起きやすい危険な暑さ。
番外編「油照」(あぶらでり)
薄曇りで風がなく、脂汗がにじむようなじっとりとした蒸し暑さ。このうえなく不快な暑さ。
私はこれを夏の島で経験しました。風が全く吹かない島はフライパンの上にいるような感覚でした(笑)。

炎昼、極暑、炎暑、酷暑、油照……、見ているだけで汗が出てくるような感じがしませんか? いゃぁ、暑さは苦手だし、もういいわ-と思った方、次の章でクールダウンいたしましょう。

「暑さ」があるからこそ、「涼」がある

夏は暑いのが当たり前。だからこそ、暑さのなかに感じる涼気を夏の季語としています。
涼風・夏の月・夕立・噴水・泉・清水・滝・浴衣・夏料理・寿司・冷奴・ビール・焼酎・ソーダ水・ハンモック・シャワー・風鈴・避暑地……など。
今度は一気に涼しくなりましたね(笑)。
── 言葉や漢字の成り立ちを知ることは、日常生活に膨らみを持たせてくれるはず。言葉のそれぞれに背景や思い出が宿っているなんて素敵なことですね。今回の「知って得する季語」も、その情報をたくさん含んでいる言葉なのではないでしょうか。