春の嵐で強い風雨に見舞われたり、気温が急上昇したりと、何かと忙しい天候の日々が続いており、穏やかな春の陽だまりを心待ちしたくなる日々です。さて、間も無く卒業式のシーズンがやってきます。卒業式の日取りは学校によって異なりますが、早いところで3月1日に高等学校の卒業式が行われ、大学の3月下旬の卒業式がシーズン最後となるようです。皆さんの卒業式の思い出やイメージはどのようなものでしょうか。卒業証書授与や恩師の言葉、または、呼びかけ式の送辞や答辞でしょうか。それとも、涙声で歌った卒業ソングでしょうか。地域によっては桜のシーズンと重なって、風の香りやその風景全体で卒業式を記憶されている方もあるのではないでしょうか。さて、この卒業式、実は教育の意図があってスタイル化されているのをご存知ですか? 今回は卒業式についてその成り立ちと、新旧卒業ソングについてご紹介いたします。

現代の卒業式は協同心を養うためのものだった!?

卒業式の歴史は、1876年(明治9年)に陸軍戸山学校によって始まりました。このころの学校教育は現在のような年齢別の区切りによって進級するものではなく、進級試験に卒業式が含まれての行事であったため、合否によって明暗が分かれるものでありました。その後、1892年(明治25年)に小学校の始業が4月に統一され、それによって3月卒業が定着し、さらにその後、同年齢によって編成される学級制度や国定教科書制度などが定められました。こうして、年齢や入学・卒業年度の線引きが行われ、教員は煩雑な都度試験による学級編成から、決まった総数の集団をまとめる役割として注力されていったのでした。その過程において、各学校固有の卒業式形態から定形化された卒業式に移行され、卒業式のような場所での共通の感情や記憶を醸成する流れが協同心を養うと考えられたのではないかとも見られています。いづれにしましても、呼びかけ式の送辞答辞は一種独特の雰囲気を醸し出しますし、卒業ソングでその場に居合わせた人々の意識をグッと一つにまとめるように感じた経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
参考:卒業式の歴史学 有本真紀著

あなたの卒業の思い出はどの曲に刻まれている!?

脈々と受け継がれ歌われている卒業式の定番曲といえば、国歌の「君が代」、「蛍の光」「仰げば尊し」と言いたいところですが、平成以降、これらの曲を歌う学校が少なくなっており、合唱曲としては「旅立ちの日に」が定番としてその曲名をあちこちで聞きます。そして、昭和時代でも合唱曲のみならず、海援隊の「贈る言葉」や、荒井(現:松任谷)由実さんの「卒業写真」、尾崎豊さんの「卒業」など、その当時歌謡曲が歌われることが新しい流れになっていましたが、今や音楽の教科書にJ−ポップが並んでいるのも当たり前の時代ですから、定形化された卒業式ながらもその中で歌われる曲は多様なものとなりました。最近では、森山直太朗さんの「さくら」や、いきものがかりの「YELL」、ゆずの「友〜旅立ちの時〜」など、授業や合唱コンクールの課題曲となっていて尚且つ国民的人気のアーティストの曲がよく歌われているようです。また、これら卒業式での歌を卒業生の意を汲んで選ぶ学校もあるそうですから、集団のまとまりに重きを置いた卒業式の形も、その学校やその年代によってカラーがあるのではないかと想像します。さて、いよいよ桜舞う卒業シーズンです。卒業する方も、そうでない方も、気分を新たにしたい春ですね。