ゴボウを食べさせた罪で処刑!? 体を温めデトックス効果抜群の根菜なのに

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何ものにも代え難いこのシャキシャキ (11:00)tenki.jp

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冬のゴボウの旬は11〜1月。汁物にきんぴらに、ますます美味しくなる季節ですね。ところで、英語でゴボウは『edible burdock(食べることができる根)』。食用可能らしいけどホント?的な扱いをされているのを、ご存じでしょうか。今よりさらにゴボウの認知度が低かった頃、食文化の誤解からおこった悲劇とは? そして近年再評価されているゴボウには、現代人の健康に欠かせないスゴい作用がありました!

「ゴボウを食べさせた罪」で処刑された日本人がいた⁈

ゴボウは中国・シベリア・北欧などに広く自生しますが、食用に栽培しているのは日本と台湾のみ。さらに、喜んで食べているのは日本人だけといわれています。世界的にはほぼ野菜扱いされていないゴボウ・・・そればかりか、外国人に食べさせたという理由でなんと死刑になった日本人がいるというではありませんか?!
その悲劇は、戦時中におこりました。外国人捕虜にゴボウを与えたところ、木の根を食べさせられたと誤解され、戦後にBC級戦犯として虐待の罪で処罰。なかでも、映画化もされた『貝になった男』(上坂冬子著)で知られる、新潟県の直江津町(現上越市)にあった東京俘虜収容所第4分所の裁判では、8人もの日本人が絞首刑になったのです。
もちろん、敗戦国に対する憎悪がそもそも根底にある理不尽な裁判。また虐待の内容も「ゴボウ食」だけで死刑にされたわけではなく、「汲取式トイレ」「ワラで編んだ履物」など当時の日本人には普通(よりむしろちょっと上)の環境を「人間の暮らしではなかった」と断定されるなど、生活文化へのあらゆる誤解を含んでいたともいわれています。とはいえ、ゴボウを出された外国人が「いくらなんでもこんなもの食べさせるなんて」と思ったのは、間違いないようです。
ところが、日本人にとってゴボウは「しかたなく食べている」ものではありませんでした。古より神事のお供え物にするほど大切で、「とっても美味しい」食べ物だったのです。日本人は、ゴボウのどこがそんなにお気に入りなのでしょうか?

音で食べる日本人!ゴボウは歯ごたえが命なのです

もともと日本人の味覚は「口当たり」をもっとも重要視し、料理によっては美味しさの80%を占めるともいわれています。口に入れたときの堅さ・弾力・なめらかさ・砕けやすさ。サクサク、ふわふわ、モチモチ、カリカリ、とろとろ、ねっとり・・・と、その食感を伝えるのに、日本人ほど繊細に表現を使い分ける民族はいません。
そしてゴボウの美味しさは、高名な料理人が「ゴボウは音の味」と表現しているくらい、ほぼ100%がその歯ごたえにあるといわれています。独特な香り以上に、「口当たり」の魅力で日本人のハートを掴んでいたのですね。ゴボウを口に入れた時の「カリッカリッ」「シャキシャキ」という音に脳が刺激され、美味しさの満足度に到達するのだとか。叩きゴボウやきんぴらゴボウは、200〜600年間も継承されてきた日本の食文化を代表する食物。その音とともに日本人の記憶の中に擦りこまれた味だったのです。
ゴボウは水分が抜けると「ス」がたってスカスカの歯触りに。これを食べたら日本人でも根としか思えないかも・・・。できれば泥付きで買い、持ったときしっかりして弾力があるものを選びましょう。柔らかく曲がるものは、鮮度が落ちてスが入っている可能性大です。保存方法も、軽く湿らせた新聞紙などに包んで乾燥させないように気をつけます。適当に切りサッと茹でて表面に油をまぶしておくと、冷蔵庫で5〜6日保存できます。
ゴボウや蓮根などの根菜でつくる「きんぴら」の由来は、坂田金平(さかたのきんぴら)。古浄瑠璃に登場する、すごい怪力の持ち主なのです。それもそのはず、彼はあのマサカリ担いだ金太郎こと坂田金時(さかたのきんとき)の息子さん! 食べたら強くなるほど精がつくということでしょうか。 歯ごたえのあるゴボウをしっかり噛み締めれば、脳も発達しそうですね。

食物繊維だけじゃない!冬の体に必要な栄養がいっぱい

ご存じの通りゴボウは、スジスジの野菜。その特性が、食物繊維が不足している現代人の食生活に大きく貢献すると注目されています。食物繊維(ダイエタリー・ファイバー)とは、食品中の成分のうち、人の消化酵素で消化されにくい成分のこと。腸の働きを活発にして余分な脂質や老廃物の排出を助け、腸内環境を整える働きがあります。
ごぼうには、水溶性と不溶性の2種類の食物繊維が含まれています。不溶性のリグニンは大腸ガンの予防に有効とされ、また、水溶性のイヌリンは急激な血糖値の上昇を抑え、糖尿病の予防に役立つともいわれています。老廃物が排出されることで腸から栄養も吸収しやすくなり、肌荒れが改善し美肌効果も期待できます。さらに、ゴボウはビタミン類やカリウム、マグネシウム、亜鉛などの微量ミネラルも多く含み、心身のバランスを維持。また、豊富なポリフェノールの抗酸化作用によりアンチエイジング効果も抜群なのです!
香りやうまみ、ポリフェノールは皮に多くあるので、剥かずに包丁の峰でこそげ落とすのがおすすめ。いちどに大量に食べると消化の負担になるゴボウですが、ミキサーにかけてポタージュやムースにすれば、お腹にやさしい栄養豊かな離乳食や介護食にもなります。
土の下に育った根菜は体を温めるといわれています。冷えて便秘になりやすい冬、美味しいゴボウを積極的に食べて、すっきり元気に過ごしたいですね。<参考>
『貝になった男 直江津捕虜収容所事件』上坂冬子(文芸春秋)
『ごぼう』冨岡典子(法政大学出版局)
『野菜』南清貴・池上幸江・日本ベジタブル&フルーツマイスター協会/監修(プチグラパブリッシング)

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