秋の夜長の風物詩といえば、中秋の名月を愛でる十五夜のお月見。
今年は明後日の9月15日(木)が「十五夜」となります。
この日は中国でも「中秋節(ちゅうしゅうせつ)」の祝祭事として、家族が集まってお月見を楽しみながら五穀豊穣を祝う習慣があります。
中秋の名月にちなんで、中国の伝統行事・中秋節にまつわるお話をお届けしましょう。

中秋節を華やかに彩る提灯
中秋節を華やかに彩る提灯

どこも欠けていない満月は「大変おめでたい」

中国の「中秋節」は、「春節(旧暦の1月1日)」「端午節(旧暦の5月5日)」と並ぶ三大節句のひとつで、旧暦の8月15日(今年は9月15日)に、十五夜の月を愛でながら秋の豊作を祝う伝統的な行事です。
中国古代の暦法によると、旧暦の8月15日は秋(旧暦の6~9月)のちょうど真ん中にあたるため、「中秋」と称されています。
また、中秋節は別名「団円節」「団欒(だんらん)節」とも呼ばれ、「大変おめでたい」という意を表します。
中国ではどこも欠けていない満月を「円満・完璧」の象徴と考え、1年で最も美しいとされる中秋節の満月(厳密には満月にならない年もあります)を特に大切にしています。
祝日となるこの日は、遠くに住む子どもたちも実家へ戻り、家族全員で食卓をぐるりと囲んで、久々の一家団らんを楽しむそうです。

中国で「円満・完璧」の象徴とされる満月
中国で「円満・完璧」の象徴とされる満月

3000年以上の歴史をもつ中秋節の祭事

中秋節を祝う習慣は3000年以上の歴史があり、紀元前の商王朝(殷時代)で行われていた「月祀りの祭事」が起源といわれています。
民間で中秋節のお月見が始まったのは魏の時代ですが、当時はまだ一般風俗として定着していませんでした。唐の時代になり中秋節が国の祝日に制定されると、お月見は庶民の娯楽として徐々に広まり、月を詠じた多くの名詩句も残されました。
その後、中秋節は春節に次ぐ重要な祝日のひとつとなり、昔ながらの伝統行事や習慣が現代の生活にも受け継がれています。

中秋節に欠かせない中国銘菓「月

中秋節になくてはならない食べ物のひとつが「月餅(げっぺい)」です。
日本では月見団子をお供えしますが、中国では満月に見立てた丸い月餅を家族で切り分けて食べ、家庭円満と皆の健康を祈ります。
月餅は中秋節の贈り物としても人気があり、なかには金箔入りの高級贈答品や、直径30cm以上の特大月餅もあるとか。ちょっと驚きですよね。
その他、月餅には中に入れる餡によってさまざまな種類がありますが、中秋節に多く出まわるのが、餡の中に塩卵の黄身が丸ごと入った「鹹蛋(タンファン)月餅」です。
鹹蛋とは塩漬けにしたアヒルの卵の黄身のことで、鶏卵よりも脂分が多く、ねっとりした濃厚な味わいが特徴。こんがり焼けた生地をふたつに切ると、餡の真ん中にオレンジ色の丸い黄身が姿を現わし、まさに満月のお月様のようです。
とろりとした黄身の塩味と、程よい甘さの餡が絶妙にマッチした鹹蛋月餅は、見ても食べても楽しめる風雅な秋の銘菓といえるでしょう。
中秋節ならではの鹹蛋月餅は、横浜・神戸・長崎の中華街でも購入できますので、ぜひこの機会に味わってみてはいかがですか? お月見とともに楽しむ、ちょっと風流なシノワスタイルのスイーツタイム……これはオススメですよ!

お月見のお供にぴったりな「鹹蛋月餅」
お月見のお供にぴったりな「鹹蛋月餅」