「暑さ寒さも彼岸まで」という通り、春と秋にやってくるお彼岸。
春分の日、秋分の日を中日として前後3日を合わせた7日間がお彼岸です。
春分の日と秋分の日は太陽が真東から登り真西へ沈む日。
仏教の考えから、この日は故人への想いが通じやすいとされています。
そのため、お墓参りに行ったり、お供え物をしたりという習慣が定着しました。
お供え物の定番といえば「ぼた&おはぎ」ですが、春と秋で呼び名が違うのをご存じでしたか?
意外と知らないお彼岸のお供え物のあれこれに迫ります。

「ぼた餅」はこしあん、丸型が基本形
「ぼた餅」はこしあん、丸型が基本形

なぜ、お彼岸でぼた餅をお供えする?

今でこそ、ぼた餅・おはぎはスーパーや和菓子店で気軽に買えますが、昔はたいへんな高級品でした。
江戸時代にさかのぼると、当時の甘いお菓子といえば「干し柿」「さつまいも」といったところが庶民にとっては身近なものでした。
今では家庭に必ずある「砂糖」は普段なかなか口にできない高級品だったのです。
また、ぼた餅といえば「あんこ」が欠かせませんが、こちらの原材料「小豆」も江戸時代の人々にとっては思い入れの深い食べ物でした。
その当時の人々には「赤」=魔除けの色と信じられていたからです。神社の鳥居が赤いのも、魔除けからきているとか。小豆は赤い食べ物として魔除け効果を期待されていたのです。
魔除けの小豆+高級品の砂糖でつくられたぼた餅は、ご先祖様に振る舞うお供え物としてベストなものだったのでしょう。

江戸時代の小豆は神聖な食材でした
江戸時代の小豆は神聖な食材でした

春は「ぼた餅」、秋は「おはぎ」の違いって何?

先ほども紹介したように、春は「ぼた餅」、秋は「おはぎ」と同じあんこを使ったお菓子にもかかわらず、名前が違います。
本来、「ぼた餅」は「こしあん」、「おはぎ」は「つぶあん」が基本。それには先人たちの食に関する知恵が隠されていたのです。
小豆の収穫時期は秋。
とれたての小豆は皮もそのまま使えるからつぶあんに。一方、春は秋に収穫した小豆を使うので皮が固く、こしあんにせざるを得ないのです。
さらに、それぞれの名前にも季節が表されています。
ぼた餅は春の花「牡丹」、おはぎは秋の花「萩」に由来しています。
いずれもそれぞれの花の形にあわせ、ぼた餅は牡丹のような丸形、おはぎは萩の花のような俵型が基本形でした。

「花の王」ともよばれる春の花・牡丹
「花の王」ともよばれる春の花・牡丹

お供え物のぼた餅は、いつ食べればよい?

ぼた餅をご先祖様にお供えするのは、やはりお彼岸の中日が一番よいとされています。先ほどもお伝えしたとおり、中日はご先祖様と心を通わせやすい日とされているからです。ただ、何より大事なのは気持ちですから、お彼岸の期間であれば問題ありません。
ですが、お墓参りに出掛けたら、お供え物はすぐに引き上げて自分たちでいただきましょう。まわりを汚さないためのマナーです。仏前にお供えした場合も痛まないうちに食べるに越したことはないので、長々とお供えしておく必要はないようです。
意外と知らなかった「ぼた餅」と「おはぎ」の違い。昔から伝わるぼた餅・おはぎは日本の人々がご先祖様を大事にしてきた証しでもあるのですね。