近年、犬だけではなく、やウサギ、フェレットなどのペットの散歩がブームの兆しを見せているようです。おとなしいウサギやフェレットとはちがい、活発で気ままな猫となると、「させてはみたいけど・・・」と思いながら勝手がわからず二の足を踏んでいる飼い主さんも多いのでは。でも、コツさえつかめば、安全なお散歩も可能です。陽気が安定していて蚊やダニも少なくなり、また猫がよくじゃれるススキやえのころ草、どんぐりなども豊富。行方を見失いがちな籔などの草もまばらな晩秋のこの時期は、猫散歩には最適な季節です。

猫散歩で注意すべきポイント5選

ここ10年、筆者は一日も猫の散歩を欠かしたことがありません。10年前に我が家にやってきたオス猫のサスケは、生後半年を過ぎた頃から外に興味を示しだし、ドアを開けると脱走することがたびたび。そこでいっそのことと、散歩に連れ出すようになりました。そしてここ数年、「うちの子も散歩させてみたいんだけどどうしたら・・・」という相談を散歩中にされる頻度が多くなってきました。そこで、そんな方のために失敗から学んだ猫散歩で留意しておくべきポイントを、いくつかまとめてみようと思います。ご参考になれば幸いです。

その1.リード(ハーネス)はショルダータイプを。外れることは前提で
まずはリード(ハーネス)選びです。猫の体はとても柔軟。首輪だとすぐ外れてしまいますし、外れないようきつく締めすぎると気管を締め付けてしまいます。
なので、首輪タイプではなくショルダータイプのものがいいでしょう。体格の大きな子でも、猫は肩周りは華奢ですから小型犬用を選びます。ボレロ風の布になったタイプもありますが、シンプルなヒモタイプでも十分。猫は体温が高いし、外でゴロゴロころがったりもしますので、ワンちゃんのような胴体をくるむものはやめたほうがいいかもしれません。
猫の背後に回ってまず頭を通し、片手ずつ腕輪部分に入れてからすばやく留め具を締めます。ショルダータイプでも猫は懸命に体をよじればはずれてしまいますが、万一の際に外れるくらいで大丈夫です。むしろ外れないほどだと体を傷つけるおそれがあります。
ちなみに、リード装着した際の猫の反応が、散歩断念の最初のハードルの場合が多いようです。
でも、最初こそ違和感があり嫌がって体をよじったり転がったり動かなくなったりして抵抗するかもしれませんが、外が大好きなタイプの猫は、3~4度リードをつけて外に連れ出すのを繰り返しているうちにまったく気にしなくなり、装着する際にもあまり抵抗しなくなります。
外が好きで散歩ができる子は、一度目、二度目・・・と回を重ねるごとに外での行動が目立って大胆になってきます。逆に、外が嫌い、怖い、というタイプの子もいますので、その場合は無理強いはしないで。せっかく買ったリードがもったいない、と思われるかもしれませんが、病院に連れて行くときなどでも重宝しますので、無駄にはなりません。

その2.時間帯は昼近くの午前中。犬の散歩ラッシュは避けて
さて、いよいよ出発です。最初はキャリーかごに入れて適当な公園や空き地などまで運ぶのが安全でしょう。猫は人が多いのを嫌うので、住宅街ならもっとも人けのない時間帯、午前九時くらいからお昼くらいの時間がベスト。
午後四時から六時の時間帯は犬の散歩が多く、ときにほえられたりもしますので、最初はこの時間帯はさけたほうがいいです。

その3.気をつけるのはまず自動車、そして子供
野良猫の死亡原因の多くが車の轢死。言うまでもありませんが自動車には最大限に気をつけてください。通行量の多い道路の位置などを常に把握し、万一にも飛び出したりしないように気を配って。
その次に心配なのが子供。猫を見かけると大声をあげて走り寄ってくる子供たちがいます。
それでびっくりしてパニックになりがちなので、幼稚園児や小学生低学年世代のちびっ子の集団がいる下校時間などは、できるだけ避けると同時に、もし走り寄ってくるようなら、事前に抱き上げてしまうのが無難。
「そっとさわってあげてね」と頼めば、猫のほうも次第になれてきて、いずれいい友達になります。
一度、我が家の猫が行方不明になったときも、顔見知りの子が「あっちの公園にいた」と教えてくれて無事見つかったということがありました。

その4.草むらでは自由に。ダニやノミが心配なら…
犬と違って猫は道の中央ではなく狭い場所や端っこ、籔などが大好き。安全な場所ではしばらくリードから手を離して、自由に好きな狭い場所を歩かせてあげるのもいいでしょう。リードは、猫が突発的に何かに驚いて走り出したり、あるいは道路に飛び出したり人家に飛び込んだりしないようにするため。
草叢にはノミやダニなどの寄生虫がいて、猫にすぐ取り付くことが心配かもしれません。でも、長年毎日草叢を歩き回っていた我が家の猫にノミもダニもついたことはありませんでした。
おそらく長時間、何時間もそうした場所にとどまればとりつくのでしょうが、散歩程度でつくということは、ほとんどないようです。心配なら獣医さんにスポット薬をいただいて、年に二~三回つけておけばより万全です。

その5.木登にチャレンジ。リードのわっかは切っておこう
爪きりをしていない猫ちゃんは木登りをしたがるかもしれません。登らせないという手段もありますが、木登りが大好きなら、やらせてあげるのも楽しいしかわいい。そんなときのために、リードの持ち手の輪っかの部分は枝に引っかかりやすいので切ってしまいます。手から外れやすくはなりますが、危険な場所ではしっかり手に巻きつけて握っていれば、かえって外れないものです。もちろん、リードから手が離れない範囲で上らせてあげるというやり方もありますし、そのほうが安全ではあります。
猫は上るのは得意でも降りるのが不器用。降りられなくなる子もいます。筆者も今まで何十回も木に登っておろしました。無理なようなら、あまり高く上らせないのが無難です。

猫散歩で季節を感じる

猫散歩の効用は、猫のストレス解消やダイエットになることなどももちろんですが、ほかにもいいことがあります。
室内飼いで外に出さない場合、猫にとって屋外は未知の世界。
万一ベランダ伝いに、あるいは閉め忘れた窓から外に迷い出てしまった場合、近所の地理がわかっていなければ、猫は迷子になってしまいます。
また、外界のさまざまな刺激や事物になれていなければ、パニックになり、家からどんどん離れて、そのまま行方不明になってしまう子も多いのです。
散歩によって猫にも自宅と外との脳内地図を作ることができます。外に出てしまったときにも、自力で戻ることができ、迷子になることがぐっと少なくなります。
飼い主にとっては、猫と散歩することによって自宅の近くに「こんな道があったのか」と新しい発見があったり、珍しい鳥や草花、昆虫、今まで見たことのなかった珍しいキノコを思いがけず発見したり、面白いおじさんやおばさん、子供たちと知り合いになったりもします。
何より、屋内では見せることのない愛猫の愛くるしい仕草や生き生きした表情をたくさんみることができますよ。
ぜひカメラを持って、愛猫といっしょに散歩に出て、季節を感じてみてはいかがでしょうか。