十月の後半から少しずつ気温の低い日も増え、北からは雪の便りも聞こえるころとなりました。
明日、十一月八日は二十四節気の「立冬(りっとう)」です。この日から暦の上では冬が始まります。
北風の吹き鍋物であたたまる、かと思うと、春を思わせるような暖かな「小春日和(こはるびより)」もあり、少しずつ冬が深まって行きます。
七十二候は、初候「山茶花始めて開く(さざんかはじめてひらく)」、次候「地始めて凍る(ちはじめてこおる)」、末候「金盞香(きんせんかこうばし)」

季節の花「茶の花」
季節の花「茶の花」

季節の変わり目はなぜ「立」なのか?

二十四節気は「二至二分(にしにぶん)」を中心に四季に分かれます。「二至二分」とは、冬至・夏至と春分・秋分ですね。
さて、「立春」、「立夏」、「立秋」、「立冬」…季節の節目の暦には、なぜ「立」の文字がつくのでしょうか?
「立」には新しい季節になるという意味があります。そして、この季節の節目を「四立(しりゅう)」といいます。※1
「立(りつ)」という言葉を国語辞典で引くと『…始まる。「立春」「立秋」』、『まっすぐ立つ・立ち止まる・成り立つ…』などの意味もあります。季節の節目に相応しい言葉ですね。
また、この日からは今が盛りの紅葉も、季語では「冬紅葉(ふゆもみじ)」と呼ぶようになります。その他の季語はというと…。

「立冬(りっとう)」にまつわる季語

「立冬(りっとう)」は、季節の節目を表わす言葉とともに、季語でもあります。
「冬立つ」「冬に入る」「冬来たる」「冬来る」、そして「今朝の冬」…と、いくつかの傍題がありますが、どれも始まりを感じさせますね。
その他に、初冬の季語には「冬浅し」「冬めく」など、きざしを感じる言葉や、気象を表わす「時雨(しぐれ)」「小春日(こはるび)」、天文を表わす「凍て星(いてぼし)」「冬満月(ふゆまんげつ)」などがあります。
そろそろ必要になる「マスク」「セーター」「手袋」「ショール」などの日常品、食卓に出番が増える「湯豆腐」「寄せ鍋」などの料理…身近な言葉にも季語となっていて、私たちの生活が、歳時記と共にあると言っても過言ではありません。

「立冬」に行事はある?

立冬の行事はと言うと…全国的に共通している家庭での行事はないようです。
ですが、京都では千枚漬けを付け始める日、金沢・兼六園をはじめとした、日本庭園では雪吊りや松のこも巻きなど、各地に季節の風物詩があります。
冬は結びの季節です。次に春を迎える「立春」までの間、ひとりひとりが何かを結んでいく季節であり、その始まりが「立冬」です。
日記帳を新しくする、年賀状の準備をするなど、新年を迎えるための準備をする中で、何かを思い出したり、気づくことのある時期かもしれません。それぞれが心の紐をきゅっと結ぶ。
「立冬」に、自分だけの行事をつくってみるのも良いですね。

《参考文献》
俳句歳時記「冬」 角川学芸出版編