早いもので、春爛漫を感じたかと思ったら…あっという間に暦の上では夏がやってきます。
端午の節句の翌日、5月6日は、二十四節気の「立夏(りっか)」です。季語では「夏きざす」などと言います。新緑がまぶしく、季節がぐん!と前に一歩進んだ感じが漂い始めます。この時期に美しい花と緑、そして空についてお話しましょう。

まずは、立夏(りっか)のおさらいから…

立夏(りっか)は、まさに「夏立つ」頃という四季の節目を表わしています。別の言い回しに「夏来る(なつきたる)」、「夏に入る」、「夏きざす」などがあります。きっぱりと、ここから夏!というよりも、そろそろ夏の気配が漂ってきますよ…という節目です。しかしながら、季節と言うのは本当にすごいと思うのですが、最近の空に見える雲は、棚引くと言うよりも、ふわっとした綿のような形になり、夜空も月を覆うベールが薄くなってきたようです。夏が来る準備が着々と進んでいることがわかりますね。
天文的なことを付け足しますと、立春に太陽黄経が0°から始まり、立夏には45°となるということです。太陽の角度が少しずつ傾き、空に見える景色もうつろうのですね。そして、夜空では土星の観察が楽しい時期を迎えます。『土星と月は6日の午前1時30分頃に最も近づき、その見かけの距離は1度(月の直径の2倍)あまりになります。明るい月の影響で土星があまり目立たなくなるものの、双眼鏡の視野の中でぴったりと寄り添う月と土星の姿を見ることができます。』*国立天文台サイトより引用
立夏を迎えて、土星と月が深夜に寄り添うとは…なんとも不思議な巡り合せですね。

夏の初めの楽しみは水辺の花たちにも訪れます

立夏を迎え、空の景色もにぎやかですが…五月に入りますと、緑がますます色濃くなる中、鮮やかな花色が目を引きます。例えば、『いずれあやめか、杜若(かきつばた)…」などと、女性の美しさを形容するアヤメ科の花は、どれも紫色が鮮やかなことで知られています。中には黄色や白もありますが、どれも緑の葉との色合いが印象的です。見分け方が難しいところですが…「菖蒲(しょうぶ)」と「杜若(かきつばた)」「アイリス」は水辺に咲き、「あやめ(野あやめ)」は山野に咲いています。また、同じアヤメ科でも、「アイリス」はヨーロッパ南部を原産とし、「あやめ、菖蒲、杜若」は日本をはじめとしたアジアが原産となります。ちなみに、端午の節句に入る菖蒲風呂の菖蒲は、サトイモ科の植物で花の菖蒲とは異なる種類です。
また、水辺の花と言うと「水芭蕉(みずばしょう)」なども思い出しますね。場所によってはピークを過ぎていることもありますが、標高の高い湿地ではまだまだ楽しめるのではないでしょうか。
梅雨に入る前の短い初夏を満喫したいものです。